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今月のことば

2020年6月

魅力ある柔道について

中島祥雄


 柔道は、創始者である嘉納治五郎師範が柔術諸流の長所を取入れて創意工夫を加え、明治15(1882)年、講道館創設と共に産声を上げた。
 現在200ヵ国以上の国と地域が国際柔道連盟に加盟している。このように、柔道が国際的に認知され、世界から愛されているのは、柔道に魅力があるからに他ならない。そこで、魅力ある柔道について私の考えるところを述べてみたい。
 嘉納師範は、大正11(1922)年に講道館文化会を創設し、「精力善用、自他共栄」という二大精神による社会教化への貢献を目指して活動することを柔道の本義とされた。講道館編著の『講道館柔道』によれば、精力善用は「精神身体の力を最も有効に使用することは、柔道技術の根本原理であるが、之はただ攻撃防御の技術の上にのみ当てはまるのではなく、世の各般の事をなす上にも最も大切なる根本原理である」、また自他共栄は「柔道修行者の理想とする境地を示すものであり、それは調和の世界であり愛の世界である」と説明している。
 その後、この二大精神が柔道修行の道標となった。現在でも修行者は「精力善用、自他共栄」を拠り所にして稽古に励み、嘉納師範が唱えた「柔道修行の究竟の目的」である「己の完成」と「世の補益」の達成を目指して努力することが、大きな喜びであり、誇りでもある。このように柔道は、確たる精神的理念が備わっているところが素晴らしく、そこが人々を惹きつけるのだと思う。
 その一方で柔道人口は減少しており、平成30(2018)年の統計ではあるが、全国で遂に15万人を割り込んでしまった。佐賀県においても同様で減少傾向にある。
 その要因は様々だが、やはり少子化や各種スポーツ参加の多様化が大きく影響しているのではないかと思う。本県では、柔道人口を増やす方策として、地域の子どもたちへ勧誘の声掛けや各道場でのポスター掲示による募集活動を活発に行っているほか、全国少年柔道協議会主催による柔道教室を開催することで、未経験者に体験させる等の工夫をしているところである。しかし、勧誘によって一時的に柔道をやる子どもたちが増えたとしても、柔道が魅力あるものでなければ長続きはしないであろう。
 柔道は「礼に始まり礼に終わる」という言葉通り、礼節を重んじる。そして、対人で行うが故に、相手への感謝の気持ち、思い遣りの心を育むことができ、人間形成に寄与するという点も柔道の良さであると考える。  柔道が強くなるということも当然大切である。自分の得意技が決まったり、相手をものの見事に投げたりすることができることは、精力善用の具現化でもあり、柔道の魅力の1つであろう。また目的達成に向かって努力する大切さを学ぶことができるというのも大きな魅力だと思う。
 柔道は130年以上の長きに亘り、多くの先達者によって受け継がれてきた歴史があり、昨今の柔道人口減少という一局面で一喜一憂するべきではないのかもしれないが、だからと言って傍観しているのではなく、多く人たちに柔道の良さと魅力を知ってもらうための努力は必要である。
 全国少年柔道協議会や各県が行っている柔道教室の開催、勧誘活動などの地道な努力は、柔道の良さと魅力を知ってもらう絶好のチャンスとなるであろうし、継続することで必ず成果が出てくるものと確信している。
 東京オリンピック・パラリンピックは新型コロナウイルスの世界的流行によって1年間延期された。世界中の注目が集まるところで、日本柔道が素晴らしい技を披露し、活躍することは、柔道の魅力を多くの人に伝えることに繋がるだろう。そして、多くの少年少女たちが柔道を志す切っ掛けの一助となることを大いに期待してやまない。
                             (佐賀県柔道協会会長)

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