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今月のことば

2021年10月

青森県柔道連盟のこれまでとこれから

豊嶋弘文


はじめに
 令和3年5月の青森県柔道連盟理事会において、会長を仰せつかり就任いたしました。微力ながら笹木正信前会長を副会長として支えてきた経験を生かし、全力を挙げて職務に取り組んでまいります。
 世界は「新型コロナウイルス」感染拡大の影響で制限のある生活を強いられています。柔道界においても私たちは通常の稽古ができず、中止になった大会も多くあり、現在も出口の見えない不安な日々を過ごしています。そのような中、柔道家ひとりひとりがSNSやリモート会議システムなどを利用し、今できることを精一杯の創意工夫で乗り切ろうと精進を重ねている姿を見ると、一柔道家として頭が下がる思いです。現在はワクチン接種が進み、少しずつ以前の稽古ができつつありますが、まだ予断を許さない厳しい状況です。この状況で私たちに何ができるかを考え、思い切り柔道ができる環境を少しでも整え、未来を示すことが使命と考えています。
これまでの歩み
 本連盟は、発足以来、輝かしい成績を収めた選手や柔道普及に尽力してきた方々を数多く輩出しており、充実した時期を過ごしてまいりました。特に平成10年から21年までは、中学生、高校生が全国大会で入賞者を出す等の活躍がありました。平成12年は富山県で開催された国民体育大会で少年女子が初優勝、平成14年は高知県での国体で成年女子が優勝し、全盛期を迎えました。その後は中学生がある程度の成績を残しておりましたが、高校生から上のシニアカテゴリーでは振るわない時期が続きました。その原因は、柔道人口減少もさることながら、指導者の高齢化、指導者数の減少など指導者側の問題と、県外の高校へ進学を希望する中学生が増加するなど選手側の問題も考えられ、深刻な課題となっています。
 本県では、柔道人口の減少に歯止めをかけることを目的に、平成28年から11月3日を「柔道の日」と制定し、競技スポーツから生涯スポーツに目を向けることにも取り組みました。1年目は、ロンドンオリンピック女子57kg級金メダリストの松本薫さんを講師に迎え、小学生を中心に柔道教室を開催して盛況を博しました。この取り組みは、新型コロナ感染拡大の影響で昨年度は実施できませんでしたが、一昨年まで県内の多くの小学生が参加しています。
 また、妊娠や出産、子育ての期間があって女性競技者が柔道から離れてしまう問題には、支援への取り組みに着手しました。県内の女性を対象とした講習会では、小さな子どもの世話係を準備し、子ども連れでも安心して受講できる環境を整備したり、講習会終了後にお菓子やジュースなどを持ち寄り談笑できる場を作ったりするなど、子どもと一緒に楽しめる空間作りを行ってきました。その結果、高校卒業と同時に柔道を止めてしまった多くの女性が参加してくださり、今後の普及に繋がることを期待しているところです。
これからの柔道のあり方
 柔道は、嘉納治五郎師範の教え「精力善用・自他共栄」を柱に人間形成を目的としており、生涯にわたり心身を鍛練できる競技です。また、礼の精神と作法は、柔道の根幹の1つであると同時に、社会生活上でも欠くことのできないものです。最近の柔道は、スポーツとしての側面がクローズアップされ、競技偏重、勝利至上主義に重きをおいた指導がなされ、その行き過ぎた指導が様々なハラスメントに繋がってきた事実があります。現在は、その体質から脱却することが求められており、開かれた柔道界を浸透させてゆく必要があります。
 今年の7月、東京オリンピック柔道競技が日本武道館で開催され、数多くの名勝負が繰り広げられました。そんな中、日本代表選手は金メダル9個を含む12個のメダルを獲得し、多くの国民に感動を与えてくれました。そして、柔道を志す子どもたちには大きな勇気を与え、明るい希望となったことでしょう。
 井上康生オリンピック男子監督は、「強さだけでない魅力が必要。これまでのやる側の目線だけではなく、見てもらう側の視点を考える必要がある」と話しています。また、少子化の中で柔道を普及させる取り組みに言及し「柔道の魅力を理解してもらった上で引き込むことが大事。古き良きものを残し、時代に合わせて変えることも大切」とも発言しています。
 現在の柔道界は、新型コロナの蔓延で制限の多い中での稽古を強いられています。しかし、この状況をきっかけにこれまでの練習方法を見直し、新たな方法を開発していくことで、柔道の新たな魅力を引き出すことができるでしょう。また、東京オリンピックで多くの選手たちが活躍するのを見て、新たに柔道を志す人々が生まれて来ることを期待して止みません。そして指導者には、その志を理解し、目標に向けて共に努力する姿勢が求められると思います。
 「子どもたちが柔道衣を担いで道場に通うことに憧れる柔道界を作りたい」と山下泰裕全日本柔道連盟会長が、会長就任時に述べられた柔道界を作っていくために、青森の地から県内の柔道家と歩みを揃えたいと考えます。
                (青森県柔道連盟会長)

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