HOME > 今月のことば > 2010年05月

今月のことば

2010年05月

日本柔道の発展を願って

國安教善

 昨年の4月、本県柔道連盟の役員改選が行われ、秋田県柔道連盟の九代目会長としての重責を担うことになりました。
 これまでは理事長として、夏井昇吉、北林照助両会長に、14年の長きにわたって仕えてきました。そういう意味では、理事長職から離れ、こまごました実務的な部分から解放され、気持的には少し楽になったように感じております。
 とは言っても、足下を見つめた時、平成19年に行われた秋田わか杉国体では優勝を果した競技力も最近では低下し、また過疎県ゆえ、少子化の中での小・中・高校生の柔道登録人口の減少や明年に迫ったインターハイの開催など課題も多く、より一層気を引き締めて立ち向かって行かねばという思いを強く抱いております。
 さて此の度、講道館より寄稿依頼があったのを機会に、中学時代から一貫して柔道と関わりを持ってきた一人として、今日の柔道について私なりの気持ちの一端を述べてみたいと思います。
 現在の私は、県柔連の会長としての立場と全柔連の総務委員長(平成22年2月現在)という二つの立場を有しております。
 かねてより、全柔連の施策というのは、各都道府県の実態をよく把握した上で打ち出すべきである、と考えていたことからすれば、双方をよく理解している一人として、総務委員会の施策や物事の判断は、し易い立場にあると思っております。
 こうしたそれぞれの立場を踏まえて、日頃感じていることについて、具体的に述べてみたいと思います。

 1点目として、柔道は日本を代表する競技であるが故に、オリンピックを始め、世界選手権や各国際大会等の活躍が大々的に取り上げられ、報道されてきたことは衆目の認めるところと思います。こうした背景から、競技力主体となった運営をしなければならない立場にあったことも事実であると思います。
 しかし昨今の様々な事情を考えますと、競技力向上のみならず、スポーツ少年団等の活動を含めた幼少年期の柔道、シニア層を対象とした生涯スポーツとしての柔道、そして障がい者スポーツとしての柔道、こうした柔道を視野に入れ、各団体とも連携を深めた上で、全柔連としてのバランスの取れた施策を打ち立てていくべきではないかと思っております。

 2点目は、そうした中にあっても、国民の大きな期待の中で、日本の柔道は、世界で勝つことを求められているのも事実であります。しかし最近、特に男子においては、世界の大会において優勝することが相当に厳しい状況にあるといえるのではないでしょうか。こうした状況に至った大きな要因の一つとして、日本の柔道が諸外国に研究し尽くされていることが挙げられると思います。この現状を打破し、勝利を得るためには、尚一層自らの確固たる組み手と得意技を身に付けるともに、相手が防御しにくくなるような技の多様性を身に付けることが重要ではないかと思っております。
 例えば内股や払腰の得意な人でも、足技は勿論のこと、背負投のような担ぎ技も出来、右技もやれば左技もやるというような多様性をマスターしなければならないだろうと思うのです。
 そういう意味では、最近では井上康生選手や鈴木桂治選手、穴井隆将選手などは、最も得意とする技の他に、こうした技を身に付けて戦っていますが、それでも完全とはいえない状況ではないでしょうか。
 このことを考えた時、幼少年期、いわゆる柔道を始めた時の指導の大切さ、ということをひしひしと感じるのです。それは、初めて柔道の指導を受けた時の形がその人の根幹となって、後々まで引き継がれていく傾向が強いと私は見ているのです。幼少年期に、しっかりとした組み手と得意技を指導することは勿論ですが、それとともに将来を考え、多様性を持たせた指導の仕方が大切ではないかと思っております。
 とはいっても、スポーツ少年団等の指導理念というものもありますので、それらも鑑みながら、並行して、今述べたことをも視野に入れて、技術の指導に当たってほしいと念願するものです。

 3点目は、柔道ルネッサンスについてですが、このことについて今、様々な運動を展開しております。2点目の幼少期の指導と相反するわけではありませんが、昔は例えば、腕白な学童などには町道場の先生にお願いして、技と体を鍛えてもらうとともに、心の鍛錬も自然に教えていただいてきたと思うのです。そういう意味では、今後はよりバランスの取れた幼少年期からの指導の在り方、指導者自身の在り方、というものを今一度、考えていかなければならないと考えます。
 「日常の柔道指導そのものがルネッサンスなんだ」という基本的な考え方のもと、日々の稽古の中で育んでいくべきものと思いますし、そういう意味でも、小、中、高、大学の指導者が平素、生徒、学生達、そして保護者から尊敬の念を抱かれるべき尚一層の崇高さというものに期待を寄せるものです。

 最後に諸施策を提案・推進する専門委員長会議におきましては、自らもその一員として、柔道界全体を掌握する中で、それぞれの専門委員会の役割を果していくことが大切と思っておりますし、このことに併せて、全柔連の事務局体制もより強化して、こうした諸課題に対応し推進していくことが必須であり、全柔連発展の鍵を握っていると言っても過言ではないと思います。

(秋田県柔道連盟会長)

最新記事