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今月のことば

2010年12月

「柔道に想う」

河 本 英 典

 私は平成6年より滋賀県の柔道連盟会長を務めさせていただいております。衆議院議員の故山下元利先生のあとを引き継ぎ、微力ながら熱心な連盟の皆さんたちのお手伝いをしながら現在に至っております。

 私と柔道との出会いは高等学校の体育の教科において初めて柔道衣を着た時で、今でも鮮明に記憶しております。出会いのあとは特に柔道に励むといったわけではなく、県選出の国会議員としての立場から縁あってお引き受けした経緯があります。体格が比較的大きいので詳しいことを言わなければ、ずっと柔道をしてきた元柔道選手くらいには間違えられると思います。

 また東京五輪でのヘーシンク選手と神永選手との決勝戦が、もうひとつの思い出として印象深く脳裏に焼付いています。日本のお家芸の柔道が敗れたことは大きなショックでした。小よく大を制すといわれた柔道が、体格の大きな外国人に勝つには技だけではないことを思い知らされたものでした。

 体重別の考え方は正に西洋人の考え方によるもので、戦うまえにハンディをつけてフェア(公平な条件)で戦う。牛若丸と弁慶が戦う日本的な戦い方とは全く逆なのが国際ルールの基本のようであります。相撲が体重別で戦うようなもので昔からの武道からすれば奇妙であります。日本の武道である柔道が世界スポーツとして発展していくことはよいことなのですが、時間制限が行われるようになったこともある意味、柔道が柔道でなくなったのかもしれません。初めて外国人選手に敗北を喫したことが今から振り返ってみると大きな転換点であったのかもしれません。今年から国際ルールが国内で使われるようになり、武道とスポーツの間でつらいところがあるように思います。
わが県の柔道は小学生大会を活発に行っています。県内各地の指導者の先生方による道場をベースに裾野の広がりは手ごたえのあるものですが、上級学校へ進級後の愛好者人口が減少するのは、施設面や教職員に指導者が少ないため、また大学や社会人レベルでは県内進学や就職が少ないのが大きな課題となっています。

 先日も県知事のところへ世界柔道選手権東京大会の女子63kg級で県出身者として初めて銀メダルを獲得した田中美衣選手の戦果報告に同行した際、施設面や人員面での体育教育の環境充実をお願いしました。

 サッカーや野球のように外来のスポーツが盛んななか、日本古来のスポーツを意識的に盛んにすることは、時宜を得た教育政策となるのではないかと最近つくづく思っています。日本文化がややもすると希薄になりがちな現代の日常生活を考えると青少年育成、学校教育の場に礼節を重んじる武道がもっと見直されるべきだと考えています。滋賀県柔道連盟の柔道を愛する会員の皆さんたちとこのような思いを共有して、柔道の裾野を広げ、国民スポーツとして身近な存在になれるように努力してゆきたいと願っております。

(滋賀県柔道連盟会長)

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