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今月のことば

2009年11月

地方からの「小さな提言」

木村三樹郎

 本県には、5地区それぞれに参段までの講道館段位推薦委託団体があり、各柔道会は、県の支部として位置付けられ活動しています。
 福島県柔道連盟は、昭和22年の発足から、規約の一部改正を適宜行いながら、伝統を継承し更なる発展を目指してきました。平成16年10月から組織、機構を見直し、改善を図るため、翌年9月より、グループで茨城・栃木・新潟・長野の各県を視察し、まとめた内容は、平成18年の機関誌「柔道」10月号に掲載することができました。また、視察の内容を参考にして、財務委員会で検討を重ね、組織等の改変を図りました。その結果、少年部の発足、強化委員会の設置、役員として新たに代表常任理事と理事制度等を取り入れ、縦横の連携がとれて活動し易い組織が確立しました。しかし、事務連絡の仕事は、執行部のわずかな役員が担当しており課題もあります。
 近年は、少子化や過疎化に伴い人口減少が目立ち、競技者・指導者登録者数が激減しています。それを少しでも食い止めるためには、小学生や中学生の指導に直接係わる指導者の指導方針、安全な指導が非常に大切となります。柔道を志す初心者を一人でも多く確保して、柔道の素晴らしさに気付かせ、安全に心がけ、楽しく仲間と続けられる愛好者を増やすことが登録者増、競技者増となり柔道の競技力の向上にも繋がると思います。
 日頃、感じていることから、2点について述べてみたいと思います。

正しい柔道と礼法
 「正しい柔道」や「柔道ルネッサンス」で、礼法についていろいろ言われていますが、「試合」での礼は形の礼であり、日頃の礼(躾を含む)が大切だと思います。
 小学生(幼児含む)・中学生(スポ少等)にとっては、保護者や指導者の言動は影響が大きいので、日々の稽古、道場の出入り、整理整頓、大会会場への往復の道々での服装や態度等は、よく観察して、きめ細かな指導が必要だと思います。
 特に服装では、試合会場へ「ジャージ姿」に「サンダル履」。男子選手は、柔道衣の下に汗取りシャツ(減量目的?)や長袖シャツ(運動時の)を夏でも着用して稽古をするので、柔道衣の上衣がすぐはだける姿をよく見かけます。試合では着用しないので、日頃より正しい服装をさせるべきであり、特に指導者は常に模範を示すことにより、信頼関係が深まり、指導力が発揮できると思います。
 わずかな時間に上衣のはだけを直すこと(品性)が必要であり、全体的にモラルやマナーが、欠如していると誰もが感じる姿です。
 地方で柔道を学んでいる子供たちは、日本を代表する有名選手や大学生、そして指導者や保護者の態度等、「一挙手一投足」を実によく見ており、真似をします。また、マスコミ(テレビ、新聞)報道は、メダルの色や獲得数、入賞できたか否か等、勝利至上の報道が多いのではと感じています。真の柔道の特性や正しい礼法、また、柔道を通しての教育(人づくり)の面や正しい柔道のあり方についての内容を要望し、視聴者の心に響く報道により、教育効果の上がる報道になって欲しいと願っています。
 今回、中学校の武道必修化は、とても重要で、よい環境(武道館、よき指導者)のもとで、正しい柔道の指導は生きた教えとなります。子供たちが、夢や希望を持ち続け、意志が強く、礼儀正しい人間として成長し、社会に出ても多くの柔道愛好者が生まれ、競技者や指導者として活躍できる望ましい姿と柔道界の発展が期待できます。

昇段について
 指導者登録をしている方々は、小学生、中学生、高校生等、学校や道場で柔道を志す初心者の発掘や、柔道愛好者の増加を目指して、日々努力されておりますが、若年と40歳以上の指導者登録数が年々減少しています。その原因はいろいろと考えられますが、50歳以上の方々の段位に関わる問題もあります。
 柔道の段位は「追うものではなく、後からついてくるもの」と大先輩から言われてきましたが・・昇段に難しい面があります。
 ひとつは、高段者大会や県大会、地方大会に、勤務状況や仕事内容の事情により、出場が思うように行かない現状があります。
 また、地方の柔道愛好者は、県内各地区の柔道会で黙々とボランティアで貢献し柔道の発展に尽力しており、道場や少年団で活躍している方、中学校・高等学校で連日、部活動で稽古を通して底辺拡大と人間教育に励んでいる方が多数おります。
 しかし、昇段の基準年限を迎えても、試合得点を満たすことにはなりません。長年、柔道の普及発展の中心的な活動をしており、その努力や貢献が明確ならば、点数化することや同時に加味(評価)することはできないものかと思っています。そうする事により、地方の柔道愛好者も高段者として活躍でき、柔道界全体が活性化と発展に繋がるので、是非、近い将来そういう時がくることを願っています。
 以上の通り、日頃の思うことを述べてみましたが、地方で頑張っている指導者の方々は、今後の柔道の発展に大きな力になると確信しています。

(福島県柔道連盟会長)

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