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今月のことば

2011年08月

今、柔道に思う

村山 良治

 巻頭に先立ちまして去る3月発生しました、東日本大震災において犠牲になられた多くの方々に対し、謹んで哀悼の意を表しますとともに、一日も早い復興を長野県柔道連盟一同願うものであります。・・・合掌。
 
はじめに
 長野県は南北に長く、全国第4位の面積を持ちます。しかし山岳県特有の地形により、可住地は限られておりますが、その分急峻な地形が織りなす風景は、春は山間の目映い新緑、夏は清涼感一杯の風と空と星、秋は全山燃ゆる鮮やかな紅葉、冬はホワイト一色の銀世界と、訪れる者を魅了する四季が、肌全体で感じ取れる所であります。また長野の代名詞と言われる「野沢菜・信州そば」、一寸ローカルな「おやき」、その中にあって、全国の老若男女が参拝する国宝「善光寺」、また1998年には冬季オリンピックも開催され、世界の長野として日本の心を全世界に発信いたしました。
 本県柔道連盟の組織構成は、県下を4地区に分類し、その他に専門部を併設、機能性を高め、日々の柔道指導あるいは、各種大会を通じて社会貢献活動をしております。
 今回は私の日頃の考えの一端を申し述べたいと存じます。

1.武道について 
 今我々が生活する社会は、グローバル化の進展に伴う社会構造の変化により、様々な部分において変化(弊害)が起きています。特に、人間関係の希薄化に起因すると思われる事件・事故が日々紙面を賑わしているのも、紛れもない悲しい変化です。そういった変化の中に、方向性を見いだそうとして、日本古来の武道を取り入れようとする機運が高まり、中学校における武道必修化につながったと私は考えております。そもそも武道は江戸時代初めには、武士道の事を指しましたが、江戸時代後期頃から武術の事を指すようになったと聞いております。時が流れ、乱の時代から平穏な時代になるにつれて、武術修得を主たる目的としていた部分が、日々の自己研鑽の中において、精神修養や教育的効用を見出す「道」と体育(スポーツ)に主眼を置くスタイルに変化してきました。今、中学校における武道必修化の実施に向けた施策が整備されているところですが、他の部分で補うことの難しい、徳目とでも言いましょうか、「より善く生きる」を武道から学んで、人間形成において最も多感な年代に、社会参画の意義を感じ取ることの出来る、人間性の下地を作る教育が行われるように深く思う次第です。
 「人の痛みの分かる人」をより多く社会に送り出すことが、武道に課せられた使命と感じております。

2.保護者について 
 本県では、柔道人口の底辺拡大と強化、少年期における正しい柔道の発展・普及を目指し各種大会を実施しております。その中において、本年で16回を迎えた「少年・少女チャンピオン大会」、松本で開催される少年の全国大会「醍醐杯」等は毎年参加者が増え、少年・少女に大きな夢を与える大会となっております。しかし最近思う事があります。それは、大会における保護者の服装とマナーです。現代社会において、「個」を大切にし尊重することは大変必要なことです。しかしそこには、一定のルールとマナーが存在します。今子どもたちに対しては、柔道ルネッサンス活動を推進中ですが、日頃子どもと多くの時間を接している保護者が、もっとしっかりした態度・ルール・マナーを模範として示して頂くことにより、柔道ルネッサンス活動が完結出来ると考えております。特に嘉納治五郎師範は体育・徳育・知育の教育が修行目的(真髄)であり「人間形成の一つの道である」と諭しておられますが、近年どうしても勝負偏重に陥り、大切な部分の欠如が目について仕方がありません。正しい講道館柔道発展の為に、保護者共々今一度足下を見つめ直し、常に自戒の念を忘れず、取り組んでゆきたいと思います。

 最後になりましたが、日本で生まれた柔道が、崇高な理念とともに全世界に広がってまいりました。この理念を忘れることなく、正しい柔道の普及・発展のため長野県柔道連盟一同邁進していく所存ですので、ご指導の程よろしくお願い申し上げます。

(長野県柔道連盟会長)

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