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今月のことば

2012年10月

企業のスポーツ振興について

宇井 純一

 住友海上(現・三井住友海上)女子柔道部は、1989年9月13日に誕生しました。当時、女性競技でのスポーツ振興を模索していた当社へ、女子柔道の大会スポンサーの話があったことがきっかけでした。思えば、当時私は広報課長として創部に関わり、23年の時を経て、今度は柔道部長に就任するという女子柔道との深い縁に、自分でも驚いています。更に言えば、実は、広報課長時代の部下であった佐藤弘子(旧姓 西野)は、本誌で「マンガ道場」を執筆しております。ますますただならぬ縁を感じてなりません。

 創部してから数年間、すぐにでも優勝すると思っていた周囲の期待に反して、柔道部はなかなか勝てませんでした。創部5年目に全日本選抜柔道体重別選手権大会で初めて優勝者2名を輩出した時は、とても嬉しかったことを鮮明に記憶しています。そして、紆余曲折がありながらも継続して取り組んできた選手強化策が実り始め、1996年アトランタオリンピックから2012年ロンドンオリンピックまで5大会連続で当社選手が出場、アトランタ、2004年アテネ、2008年北京の3大会では金メダリストを輩出することができました。

 創部当初、柔道を通じた企業スポーツに取り組む指針として、「世界で通用する選手の育成」、「社会人、企業人としての育成」、「柔道を通じた社会貢献」という3つの柱をたてました。そして柔道部では、監督方針の下、「世界一を目指す意欲」、「納税者として社会の一員となる自覚」、「人間として成長し続ける向上心」の3つのことを選手に求めています。会社としてもこの指針に向け様々な環境整備に尽力してきました。

 例えば、人事部に「スポーツ振興チーム」を新たに設置し、スポーツ振興に対する姿勢を社内組織という形で示しました。このセクションは企業スポーツマネージメントに特化した運営を行うため、スポーツ部の人事、総務、経理、各種戦略等のマネージメントを一手に担っております。現在は、女子陸上競技部のマネージメントも同様に行い、当社スポーツ振興の要となっております。また、選手の勤務体系、処遇全般においては、選手自身を社会人として育成するため各職場に配属し、午前中の就業を義務付け、さらには、選手の給与体系をはじめとした処遇は一般社員と基本的に同じものとしました。選手の多くは、現役引退後に故郷へ戻りますが、各々の地で社員として業務に従事しています。つまり、柔道選手として引退しても本人の希望次第では、第2の人生が待っている環境が整えられているのです。これは、選手にとって大きなことだと思います。午前中だけとはいえ、現役時代から現場での業務に従事してきたことが、結果としてスムーズに一般的な社会人生活に移行できる要因になっています。

 また、指針として掲げた3つの柱のうち、「柔道を通じた社会貢献」では、強い柔道部をつくりあげ、柔道そのものを普及させることでの貢献は勿論のこと、例えば、地域交流の観点から「少年少女柔道教室」を当社柔道場にて運営したり、国際交流の観点から外国人選手の合宿を受け入れ積極的に国際交流を深めたりするなど、まさに、柔道を通じた社会貢献を図ってまいりました。

現在、当社では「ステークホルダー(利害関係者)に対して企業の社会的責任(CSR)を果すこと」を経営理念としており、「お客さま」や「株主」などを対象として7つのステークホルダーを掲げております。そして7つの中には「地域社会・国際社会」を挙げており、まさに当社がスポーツ振興を続ける理由は、スポーツを通じて社会貢献を果すことを企業としての責任としていること、つまり「経営」の一部として位置付けているからです。

 もう1つ、環境整備において注力していることは応援体制の整備です。以前、選手に「一番嬉しい応援は?」と聞いたことがあります。「家族の応援です」との回答でした。ならば、選手にとって「会社の応援」が「家族の応援」と同じように思われるように工夫しようと、選手の所属職場社員を中心とした応援団を結成しました。いつも一緒に仕事をし、勝つ喜び、負けた悔しさを共有できる上司、同僚、部下を中心とした応援団は、いわば「第2の家族応援団」です。この家族的応援団は年々発展し、今では「ガッテンダーズ」という約4500名の社員、代理店の皆さんからなる後援会組織に形を変え、当社の応援の中核的役割を担っており、会社の応援が家族の応援と融合した体制が整備されていると思っています。

 先のロンドンオリンピックでは、当社の上野順恵、中村美里の2名の部員が晴れの舞台に立ち、堂々と戦ってくれました。それぞれ部署は異なりますが、偶然にも私は2人と同じ職場にいたこともあり、まるで我が娘を応援するかのようにテレビに向かって大声で応援しました。
 多くの方々のご支援に支えられ、素晴らしい結果を出し続けている女子柔道部ですが、会社としても、スポーツ振興を通じて社会に貢献していくことを企業の社会的責任と引き続き肝に銘じて、今後も取り組んでいきたいと考えています。

(三井住友海上火災保険株式会社 取締役専務執行役員 兼 女子柔道部長)

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