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今月のことば

2005年11月

嘉納師範の教え、二つ

南谷 直彦

 2005年もあと二ヵ月で終えようとしています。講道館をはじめ、全柔連やその下部組織の行事も、多くの成果を残しているようですが、中でもカイロで行われた世界柔道選手権大会は衆議院選と重なり、大変な盛り上がりをみせて終了しました。
 平成二〇年の全国中学校柔道大会が石川県で開催されることになり、指導者不足の解消に困窮している現状です。中学校の指導者不足はどの県も同じであり、引き受けたからには一人何役もこなし、日頃の勤務や指導に当たるのが当然の責務ととらえ、師範の教えを実践してほしいと願っている者の一人です。

 教え、その一

 師範の言葉に「教育の事、天下これより偉なるはなく、楽しきはなし」があります。
 私は高校長の時、学年始めの職員会議でこの言葉を何度か紹介し、教師の重責を喚起したものです。師範は柔道の創始者であると同時に偉大なる教育者なればこそ「教師の重責を理解し、将来的に教え子たちがどう応えてくれるか、人の育成に対する楽しさ、結果の喜びを味わってもらいたい。」といえる言葉なのです。
 私たち柔道関係者はこの「教育」を「柔道を通しての人間教育」に置き換えてみてはどうでしょう。
 柔道部の卒業生に「生涯柔道」についてのアンケートをとったことがあります。その結果、「時間と場所さえあれば、卒業後も柔道を続けたい」が多数を占めました。仕事の関係で、実社会に出たら、どうしても柔道衣を着ることができない人もいるかも知れないが、その培った柔道精神で自分の職務を全うすれば、それも「生涯柔道」と呼べるのではなかろうか。
 体育科の卒業研究集にこんなことを書いたことがあります。「各種大会のチャンピオンは一人である。三年間努力してもなれなかった人も沢山いるが、人生のチャンピオンは何人でも可能性がある。スポーツで培ったものを生かし、人生のチャンピオンを目指しましょう」と。式典などで話した言葉を実践し、その姿を年賀状で報せてくれる教え子たちに触れる毎に教師冥利を感じながら拍手をおくっております。

 教え、その二

 大学を出て新米教師の頃、講道館だったか文部省か記憶にないが、直接師範から教えを受けたと言われる講師の方からの言葉がこうであった。「柔道家には酒飲みが多い。色々失敗例もあるので、次の三つをクリアーできたら大いに飲みなさい」
?身体を害さないか
?経済的に許されるか
?明日の仕事にさしつかえないか

 私も酒は好きであるし、その機会が多かったが、この二つの教えを肝に銘じて大過なく三八年間の教員生活を終え、そして退職して一〇年の現在まで守っています。 
 永い監督生活で、胃がきりきり痛む試合も随分多かったが、終わってからのアルコールがそれを軟らげてくれました。
 酒席で仕事や人事のこと、人生訓と言ったことも聞いたり語ったりもできた。一方、健康を害したり、事故を起こしたりのマイナスの事例も目のあたりにしました。
 人生、何かに頼らなければならないこともあります。そして、短い言葉がその後押しとなり、明日の活力ともなるのです。そんな言葉を「座右の銘」と呼ぶのかなと思い、皆様方に紹介しました。

(石川県柔道連盟会長)

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