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今月のことば

2011年04月

高校柔道に思う

藤木崇博

 全国高体連柔道専門部を教導してこられた先輩の先生方は、高校柔道がより充実し向上することを願って組織を改革し、また事業内容(全国高校総体、全国高校選手権、海外交流事業等)や運営を見直す一方、新たに設けるなど努力をしてこられました。これらの積み重ねが現在の姿です。「守るべき伝統」を維持しつつなお中身を改善していく、これは難しいことですがやらなければなりません。「守るべき伝統」は守られてこそ大会に権威が生まれてくるのです。それを決して崩すことなく充実を図る、このことが必要です。柔道専門部は全国高体連の一専門部であり、したがって組織改革や大会規定、大会実施要項の変更なども専門部自身の全国委員会(常任委員会を含む)を経て、なお全国高体連の諸会議で賛同が得られて初めて実現可能なのです。このように手順と相当な時間が必要です。
 春の全国高校選手権大会は昨年度より日本武道館、全柔連の協力を得て2日間を日本武道館で開催できることとなりました。また全柔連のお力添えもありNHK(BS1)の放映も実現しました。高校柔道界にとって悲願であった武道館での2日開催、テレビ放映復活がなされたことは大変な喜びでした。男女団体試合の他に個人試合も男女5階級で行われ、充実した内容になっております。7階級で実施してはどうかとの声もありましたが、開催した結果5階級で良かったとの意見が多数でした。理由は高校時代は少し階級に幅を持たせた方が良いと言う内容でした。全国高校総体は男女7階級で行っていますから、春は5階級(1、2年生)でもよいとの判断が大勢を占めました。
 これは私見ですが、高校からはともかく若年層からの階級の細分化には、賛成しかねます。それが決して正しい柔道をさせる方向にはならないと思っています。本来の柔道は、身体的な格差をすべて乗り越える事を目指すべきで、正しく組んで一本を取ることを目指す柔道はそこから生まれてくると信ずるからです。
 高体連柔道部は、平成19年度より国際交流の選抜チーム遠征をアメリカからヨーロッパに変更しました。フランスで12月に開催されるエクサンプロヴァンス国際トーナメントに男女7階級で参加、終了後国際合宿に参加しています。強化の意味もありますが、異国の文化とのふれあいも高体連の遠征としては大切な要素です。第1回の遠征ではイタリアにも足を伸ばし、交流試合を男女14階級の団体戦で行いました。昨年9月に東京で開催された世界柔道選手権大会に、この遠征メンバーから上川大樹、森下純平、佐藤瑠香が出場し、上川(無差別)、森下(66kg級)が金メダルを獲得しました。この遠征から僅か3年後のことです。高校時代の経験が成果の1つの要因であると信じ、この仕事にやりがいを感じております。
 高校柔道は学校における教育活動の一環として行われて来ました。したがって単に試合だけでなく、生活全般における節度ある態度を折にふれ指導する必要があります。もちろんこのことは高校柔道だけではないと思いますが・・・。
 日本柔道の根幹を担う私たちは、これまで多くの有名選手を輩出して参りました。オリンピック、世界選手権のメダリストはもとより、社会の中核を成す人物を育て、世に送り出してきました。高校柔道に携わる者は、指導者、生徒共に自信と誇りを持って胸を張れるものと思っております。
 嘉納治五郎師範の提唱された「精力最善活用 自他融和共栄」の柔道根本理念(柔道精神)を指導者自らが理解し、生徒たちに説き、そして実践に導かなければなりません。そのこと自体が高校柔道の本来あるべき姿なのです。もちろんこの柔道精神は高校時代だけではありませんが「鉄は熱いうちに打て」の例えどおり、小学生、中学生、そして高校生と人間形成にとって最も大切な時代、感受性の豊かな若い時代に繰り返し教えていく必要があります。それが立派な人間を育てることになると信じています。 
 高校柔道に携わる指導者、関係者の皆さんは、それらを心に留めて日々の柔道指導をお願いしたいと思います。そう言う私も「修行の身」です。これからの人生に「柔道精神」を心に刻み、生きてゆきたいと思っております。
皆様のご活躍を祈念申し上げております。

(全国高等学校体育連盟柔道専門部長)

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