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今月のことば

2016年3月号

山形県柔道の発展を祈念し

二戸 昭夫

1 はじめに
本県柔道連盟は10地区からなり、各地区において柔道普及活動を行っている。県柔連では3月に常任理事会、4月に総会が開催され年間の活動計画が示される。各地区では、その計画に基づいてそれぞれの計画を立てて活動している。
私は、山形市柔道連盟会長を10年も経験しており、年齢的にも次の任期は辞退を申し出ていた。しかし昨年4月の総会において、思いもよらず本県柔連会長に推挙され、第7代会長に就任した。歴代会長は、柔道界或いは政財界においても優れた業績を残された人たちで、私ごときでよいのかと、不安を抱えての出発であった。 
本稿では、私なりの経験から、本県柔道発展について考察してみたい。

2 運動部活動の現況
平成29(2017)年度全国高校総合体育大会が、山形・宮城・福島の南東北3県で開催される。昭和47(1972)年のインターハイ、平成4(1992)年のべにばな国体など、20年ごとに大きな大会が開催された。そしてそれを機に、選手強化が図られてきた。表は県高体連調査による、平成4年と平成25年度における主な競技の運動部活動加入者数の比較である。
この20年間で運動部の高校生全体が約8700人、3割以上減少した。少子化の影響が顕著に現われている。硬式野球とサッカーは9割を保っているが、他の競技は軒並み大幅に減少している。柔道も例外ではなく約半数に減少している。

競  技 平成4年 平成25年 増  減
硬式野球 1,998 1,813 -9.3%
サッカー 2,144 1,998 -6.8%
バスケ 2,889 1,675 -42.0%
バレー 2,224 1,034 -53.5%
スキー 388 95 -75.5%
レスリング 111 52 -53.2%
柔 道 1,865 920 -50.6%
総加入者数 26,073 17,379 -33.3%

(単位:人)

3 底辺の拡大
少子化の時代、野球やサッカーなどの人気スポーツに子どもが集中している。これはテレビ等マスコミの取り上げる影響が大きいのではないかと思う。
ラグビーが、ワールドカップでの活躍で一躍人気スポーツとして脚光を浴びている。柔道も同じで有名なメダリストが来県すると、押すな押すなの行列となる。平成24年度の武道必修化により、県内の中学校では多くが柔道を選択した。この機会をいかに活用するか。現実問題としては、なかなか厳しい条件があるとしても、学校や警察を退職した柔道指導者などの協力を受けて、多くの中学生に柔道の魅力を知ってもらう好機だと考えられる。山形大学柔道部は、かつては東北で最強を誇った時代もあった。べにばな国体での強化、東北ミニ国体16連覇などの実績がある。当時の選手たちも教員として活躍されている。また、医師として多忙を極め、その後奥さん共々スポーツ少年団を主宰して指導に当たっている卒業生もいる。県柔連では山形大学に柔道専門の教員の配置をお願いしているところである。
文科省は、武道は体を鍛えて技を磨くとともに礼節を重んじ相手を尊重する態度を養うことのできる運動であると定義づけている。将来を担う全ての子どもたちが武道を学ぶことにより、武道の持つ人間教育の力を発揮し、新しい時代を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成に結びつけていきたいと考えている。この考えは柔道MIND活動を推進することでもある。嘉納治五郎師範の教えの精神、柔道の心に立ち返ろうという気持ちが込められている。柔道の目指すべき方向を再認識すると共に、多くの方々に柔道の素晴らしさを発信していかなければならない。

4 新武道館の要望
昭和43(1968)年に県体育館隣接地に県武道館が建設された。1階は60名収容できる合宿所、2階が203畳の柔道場、3階が剣道場となっている。山形市のほぼ中央、霞城公園内に位置し、利便性もよく連日柔道・剣道・空手・合気道・少林寺拳法等が調整を図りながら道場を利用し、大きな大会があれば、県体育館でも行い順調に運営されていた。しかし市制施行90周年記念事業として、霞城公園は観光の拠点となる文化公園への移行を本格化するとの発表があった。すでにプールやテニスコートは撤去され、新野球場も建設中で、来年度中に完成予定である。昭和63(1988)年にスポーツ都市宣言をした山形市であるが、体育館や武道館などが霞城公園から撤去されれば市民にとって大きな損失となるだろう。施設が中心市街地にあることから、どの地域からも小中学生は自転車や公共交通機関を利用することにより、アクセスしやすく利便性に優れていた。我々は、県立体育館・武道館の新たな施設は山形市中心部に必要不可欠なものであるとの要望書を提出した。関係者の一致団結と交渉活動が功を奏したのか、県体育施設は当面存続方針が決定した。県と市は国に整備計画の延期を申し入れ、併せて耐震工事を行い、平成35(2023)年までを目途に利用可能となった。しかし県体育館・武道館は、その後に撤去が予定されており、新武道館建設に立ち上がらなければならない時期に来ている。当県に有段者として登録している遠藤利明オリンピック担当大臣や理解を示している佐藤孝弘山形市長に働きかけながら、新武道館建設に向けて努力したい。 我が郷土、米沢藩主・上杉鷹山公が家臣に示した歌
「なせばなる なさねばならぬ何事も ならぬは人のなさぬなりけり」
の信念を持って前に進みたい。

(山形県柔道連盟会長)

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