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今月のことば

2008年03月

地方でめざすもの

五十嵐寛司

 柔道は勝負の中に、礼儀を重んじ、相手を尊重する日本古来の伝統と歴史につちかわれた「武道」である ―世界選手権大会の祝辞より抜粋― これは私の得心出来る文節の一つである。
 地方の柔道愛好者も、自分達の出来る範囲で努力し「講道館柔道」の継承者の一員であると自負している。嘉納師範の理念の理解を深め、試行錯誤を繰り返し、「正しい柔道」の普及活動に努めている。次代を担う、青少年の健全育成に、参画出来る喜びと、多くの責務を背負って「講道館柔道」に関与しているのが現状です。

・正しい柔道の普及
 「正しい柔道」の普及、徹底が、提言されて幾久しい感がする。
 今日でも、大会の挨拶や、紙面上でも有識者各位より数多く発信されている。
 私の理解する「正しい柔道」とは、嘉納師範の「己を完成して、世を補益する」の文言が念頭にあります。
 「正しく組み合い、投げて、投げられる。お互いに信頼感を保ち、心身共に成長する。集団の中で、良き生活習慣を身につけ、誰にも迷惑をかけない普通の社会人になる」ことだと思っています。
 勝負の判定については、「投げた」「抑えた」「絞めた」「逆を取った」であり、誰が観ても、単純明瞭であるべきと力説しています。
 柔道の普及には、広報活動が重要です。柔道愛好者各位が、柔道の神髄を理解するのは至難な技です。当然なことで、個々が自然体で対応すべきと考えています。それよりも今日の社会では、柔道関係者が、現役引退後に地域の体育活動に如何に関与して行くかが大切になります。
 「生涯スポーツの友」として柔道を通じて、青少年の健全育成に励むことは当然ですが、今一歩踏み込み、公民館活動等の中で、柔道の理念を注入して行くことが肝要です。
 柔道関係者が、地域の体育指導員として、コミュニティ活動の役職員として、その一翼を担って活躍されることを推奨しています。

・柔道ルネッサンスの効用
 人間教育を重視した、嘉納師範の原点に立ちもどる活動の展開は極めて意義深い。全柔連、講道館が全国の柔道愛好者に発信した、挨拶、整理整頓、友情の輪、勇気等は、人間社会の普遍のものであり、時代の風潮に流されることは許されない。これらのことを大声で叫ばなければならない時勢を憂慮すべきであり、このことに楔を打ち込んだことは素晴らしい。
 数年前に開催された柔道ルネッサンスの新潟会場は、盛況満員であった。内容に若干の違和感があったことは否めない。今後は、一歩押し出して、「これが柔道だ」「だから柔道なんだ」と言う明解な決定打を期待したい。
 会場内、紙上等で標語が示され、考案者の表彰が行われている。今後は実践者の体験発表等を考慮すべきと思います。
 地方でも礼儀作法等に、見苦しいものがあります。審判の判定に対する「自己中心的」な態度。年長者を無視し、先輩や目上の人を敬う風習の欠如等が、日常的に指導者層の中に潜在するのも事実です。

・これからの取り組み
 県柔連の試練は毎年「財政の確保」と「登録会員の拡大」から始ります。このことに関し、登録制度が始まって以来、漠然として協力されている会員と、ひたすらに地元少年団の健全育成に勤しむ郡部の指導者各位に、県柔連は何が出来るのか、自問自答して居ります。「お願い」と「感謝」だけの年月が過ぎて行きます。
 「生涯スポーツの友」として、柔道の底辺の拡大活動は重要です。一方、県柔連全体の実力向上と県体育協会の加盟団体の一員として、勝利至上主義が優先するのも現実です。来年は本県で国民体育大会が開催されます。納得出来る成果を期待されているため、悪戦苦闘中です。
 大会等の挨拶は大変です。講道館柔道、大会参加の意義、事故や練習態度、審判員の姿勢、精神論など多岐にわたります。開会式は簡素に、閉会式は役員全員が参列し、表彰式を行っている。表彰式は優勝者を賞讃する最高の舞台なのに、残るのは関係者のみ、一抹の淋しさが漂っています。
 スポーツ少年団の大会回数の多いのも気がかりです。柔道の基本である「受身の本質」を十二分に時間を掛けて、実践させていただきたい。
 七月下旬、全国教員大会、来年十月、四十五年ぶりの国民体育大会の開催です。ご来県の皆さんと選手各位の熱情に応えられるよう県民全体で準備に追われて居ります。
 全国の皆さん、新潟(豊栄綜合体育館)へのご来場お待ちしております。
 終りに、再度の新潟中越地震の災害に対し、全柔連始め、近県の柔連より寄せられた、御見舞金、ご厚情に心より御礼感謝申し上げます。

(新潟県柔道連盟会長)

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