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今月のことば

2013年08月

「形」王国岐阜を目指して

中田喜代司

 本年、岐阜県柔道協会の役員改選が行われ、第13代会長に推挙頂き就任しました。
 昨年大垣市で行われた第67回国民体育大会「ぎふ清流国体」が成功裏に終了することが出来ました。これは全国の選手・監督をはじめとして各県役員の先生方のお陰であり、この場をお借りして感謝申し上げます。
 国体の形演技では、伝統的な和楽器とのコラボレーションを試み、小・中・高校生が演ずる「投の形」は津軽三味線で入場し、「柔の形」は箏(そう)の音色に乗せて優美に演じ、また「古式の形」は、勇壮な大垣麋城(びじょう)太鼓の演奏に合わせ、演者が赤と黒の甲冑を身に纏い颯爽と登場するという演出で楽しんで頂きました。
 平成9年の全日本柔道形競技大会から形の競技化がはじまり、平成19年には形の国際大会が講道館で開催されました。
 昨年の第4回世界柔道形選手権大会では、岐阜県から「極の形」で今尾省司七段、清水和憲六段、「固の形」では中山智史四段、林聖治四段が共に優勝するという快挙を挙げました。さらに今年3月のアジア大会でも今尾・清水組の「極の形」と白野恵・光姉妹「柔の形」でが優勝を果しました。
 当県のような弱小県から栄えある世界選手権大会に2組が出場しましたが、この様な選手を輩出できたのは、当県の形の伝統にあるともいえます。
 当県では、平成元年に岐阜未来博を開催し、会場となった県競技場一帯が整備され、それに合わせ4試合場に500席の観客席を併せ持つ立派な武道館が新築されました。この記念事業として形の大会を全国に先駆け開催しました。当初は、開催県が少なかったことから、演技や採点の方法など四苦八苦しながら始め、毎年11月3日の文化の日に実施しております。今年で21回目を数える大会となり、最初は意気込んで7種目で開催したものの、回を重ねる毎に出場者の固定化、採点方法、開催時期等問題も出てきました。
 また、飛騨高山地方では、嘉納治五郎師範が来高された昔から形が盛んに行われており、未だに「投裏の形」も伝統的に受け継がれています。
 私が初めて形と出会ったのは、中学2年の時に初段を取得した時で、その後関高校に進学してからは、鈴木輝雄先生の指導を受けるようになりました。先生は形に大変精通されており、昭和40年のの岐阜国体では、杉山千住先生と古式の形を披露されています。高校1年生の体育祭では、「柔の形」「投の形」「極の形」から各2〜3本抽出して構成された、両手取、肩廻、背負投、払腰、摺上、蹴上等演じ、赤土のグランドで投げられた思い出があります。
 
 今年県会長に就任をしたのを機に、伝統ある岐阜県の形をより一層盛んにするために、4つのことに取り組みます。
 ○指導体制充実の構想 
   各地区においてそれぞれの形を責任持って指導できる人材の育成が必要不可欠と思っており、世界選手権出場選手を中心とした指導体制の充実を図り、県全体でレベルアップを図っています。
 ○形大会の充実
   全日本形競技大会が始まったことにより、現在11月に行っている県大会では予選を兼ねられず、また、中学、高校生のみの大会となっています。もう一度現状を見直し、小学生の部を創設するなどして、形をもっと身近なものにし裾野の拡大を図りたいと思います。
 ○各大会での演技
   各大会や講習会等の機会を捉え、世界や全日本の柔道形選手権大会で入賞した選手の形披露を行っていますが、それ以外でも、常に誰かが何れかの形を演ずる雰囲気を維持する必要性を実感しています。
 ○小学生から
   岐阜国体でも小学生の「投の形」を演技に取り入れ、決して上手とは言えないものの、形を学ぶ機会として意義があったと思っています。小さい頃から形に馴染めば、少しでも柔道の技の理合いを感じてくれるものと確信しています。
 
 形を学ぶことにより、柔道の面白さや奥の深さを痛感すると思います。私自身現役時代に知っていればと思うような技や理論があり、柔道の奥深さを実感すると共に、その思いを指導者という立場で現役選手たちに還元したいと思っております。昨今、乱取が稽古の主体となり、形は昇段試験に合格する手段となりつつある中で、岐阜県は決して形の先進県とはいえませんが、今一度形の有用性を見直すと共に、今まで培ったノウハウを活かし、世界に通ずる多くの選手育成にも努力していきたいと考えています。

(岐阜県柔道協会会長)

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