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今月のことば

2009年03月

「変」

福田二朗

 東京都柔道連盟は、首都東京にあります。東京は、言うまでもなく政治経済の中心であり、官庁を始め、情報の発信基地でもあります。人口1300万人が生活していますが、これに加えて、隣接の埼玉県、千葉県、神奈川県などから通勤する数百万人を飲み込んでいます。しかし、三代続いた江戸っ子はというと、かなり少なくなりつつあります。東京は全国から流入した、新都民によって大都市へと成長してきました。そのような中で柔道界を見ますと、昔の東京の町道場出身者は少なくなりつつあり、大学柔道部出身者も、多くはいろいろな土地からやってきた人たちで、多種多様な考え方を持っており、東京という郷土色を出しづらくなっていますが、その中にあって都柔連は、三十加盟団体がよく融和し統一しております。

 また、大企業の本社が多く集中していますが、最近は、米国発の金融危機による世界同時不況の波が予想以上の速さで日本企業を襲い、企業の業績に鮮明に映しだされています。日銀短観によると各大手企業は大幅な減益で、下方修正が行われつつあり、国家財政を圧迫する段階に入っています。それに加え、政治の混迷です。早暁、政治の変化がもたらされる様相を呈しています。テレビで国会審議を見ても、また新聞を読んでも、高齢者を含む弱者に大変困難なしわ寄せが押し寄せています。円高で一ドルは九十円を上下し、株価はダウ平均八千円を上下して、金融機関、保険業を始め、企業の含み益は大変な状態を迎えており、自動車、電気産業の落ち込みに連れて関連企業も急速に悪化し、臨時や派遣の雇用者は想像以上の数字で解雇され、社会問題になっています。現時点での日本経済の状況は、世界的に見た場合、まだ良い方で、海外の比ではないようですが、このまま2009年、2010年と円高が続き、輸出産業の停滞が続けば、長い不況の中を生き抜いていかなければならないことを覚悟せざるを得ません。

 このような環境の中で、柔道界はどうでしょうか。不況の長さにもよりますが、都道府県柔道連盟は節約に次ぐ節約を余儀なくされるでしょう。極力、金のかからない大会運営や事業の実施を心がけていかなければならないだろうと覚悟しています。また、国民所得の減少に加え、高齢者の登録離れ、少子化の中で、小学生・中学生・高校生の指導者不足による競技人口の減少、等々の悪条件により登録人口も減少することが心配されます。同時に、昇段者の減少です。これは登録人口と正比例してくると思われます。これらの心配が現実とならないことを祈ってはいますが・・・・・

 財政不足を補うため、各都道府県自治体で赤字債権の発行が続く中、体育行政も財政的に過大な期待は持てません。そのような中で我々が最大の関心を持って見守っているのは、政府が学習指導要領の改訂を行い、2012年度から、中学一年、二年生の保険体育で武道が必修となることです。武道団体が待ち望んできたことです。指導者の問題を始め、年間の授業時間が少ない等の条件の中ですが(教育庁の説明では、年間二十〜三十時間。武道指導者も全国的に不足している由)、真剣に取り組まなければなりません。これに関しては、行政および全日本の競技団体が、指導者育成の機関を検討していくことになるでしょうが、我々としても、以前からこのようなことが想定されていたので、十分ではありませんが、「柔道指導者人材バンク」を設け、都柔連独自の登録制を実施して講習会の開催を続けてきています。行政の施策が判然としませんが、上部団体の指導方針が出来上がるときには、それに合わせて、都柔連の人材バンクを再構築していくことになるものと考えています。

 話は変わりますが、2013年に東京国体の開催が決定しています。現在、東京都・東京都教育庁・東京都体育協会・開催区市・各競技団体が、開催に向けて検討を重ねています。開催の節は各県柔連のお世話になりますが、よろしくご協力をお願いします。

 また、東京都では、2016年のオリンピックの開催地として立候補しています。現時点ではかなり高い評価を受けていますが、国民の大きな支持が起きてこないことに当惑しています。本年十月二日にはIОC総会で決定されるそうですので、柔道関係者の大きな支援と世論の喚起をお願い申し上げます。

 最後になりましたが、東京都柔道連盟の冲永荘一会長が2008年9月25日に逝去されました。在任二十一年に及び、都柔連の運営等をきめ細かく指導していただきました。その功績は、我々の手本として輝き続けると思います。財団法人の新法人への移行を含めて大変革の時に、非凡な指導者を失ったことは、大きな損失であったと思わざるを得ません。

(東京都柔道連盟会長)

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