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今月のことば

2018年6月

嘉納治五郎師範没後80年式典・ 偲ぶ会における講道館長挨拶

上村春樹


 本日の嘉納治五郎師範没後80年式典・偲ぶ会に全国各地から柔道界をはじめ各界の皆様に多数お集まり頂き、心から御礼申し上げます。
 嘉納師範がカイロにおける国際オリンピック委員会の会議の帰路、氷川丸船中で逝去されてから80年という歳月が過ぎました。
 師範は若くしてさまざまな学問を修めながら没頭された柔術修行の中で、古来伝わる柔術に多大な教育的価値を見出されました。そして柔術の技術に一貫する原理の把握と探求に努め、従来の柔術を抜本的に合理化・体系化することによって体育・勝負・修心を柱とする講道館柔道を創始されました。

 教育界にあっては、第五高等中学校長、東京高等師範学校長など、更には文部省普通学務局長等を務められるなど、明治、大正、昭和に亘り日本教育界の重責にあって、柔道による教育はもとより、教育一般に偉大なる貢献をされ、更にその薫陶を受けた幾多の人材が各界で活躍しました。
 師範は、東洋における最初のIOC委員に任じられ、大日本体育協会を創立し初代会長として将来への発展のための土台を創られ、「日本の体育の父」とも仰がれています。そして日本のオリンピック参加、さらには1940年のオリンピック東京大会誘致を実現されました。残念ながらこのオリンピックは第二次世界大戦で実現しませんでしたが、1964年の東京オリンピック開催に繋がったことは周知の事実です。

 現在200の国と地域が国際柔道連盟に加盟しています。これほど世界へ広がった背景には、競技としての柔道の人気があるのはもちろんですが、「精力善用・自他共栄」に集約された柔道哲学による人間形成の道という柔道の本質に多くの人が共鳴し、受け入れられたからだと思います。
 師範は「柔道は心身の力を最も有効に使用する道である その修行は攻撃防禦の練習に由って身體精神を鍛錬修養し斯道の真髄を體得する事である さうして是に由って己を完成し世を補益するが柔道修行の究竟の目的である」と、柔道の本義と修行の目的を表しています。
 「己の完成」とは勝負の修行を通して「精力善用」の原理を身につけ、さらに智徳を磨いて人格の完成を図ることであり、「世を補益」とは「自他共栄」達成のために尽すということです。
   「精力善用・自他共栄」を生活のすべてを律する規範とし、心を磨き、体を鍛え、豊かな人間性を育むこと、すなわち教育、人づくりこそが柔道の本質であるということを、深く再認識しなければなりません。
 この師範没後80年式典にあたり、先達が築いてこられた講道館柔道の伝統を受け継ぎ、嘉納治五郎師範の理想の普及発展のため、尽力していく所存です。
皆様方のご指導、ご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
                              

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