今月のことば
2012年05月
就任2年目にかける思い
山 田 昌 次
平成23年4月1日、思いもかけない京都府柔道連盟会長という大役をお引き受けすることになりました。
柔道経歴は、北海道大学時代の全日本学生柔道優勝大会や国立七大学対抗戦出場などがあるだけで、連盟会長という要職が私に務まるだろうかという不安と、やり遂げなければならないという責任感が、近年感じたことのない程の大きなプレッシャーとなって心を揺さぶられたのが、昨日のように思い出されます。
佐野修弘前会長からは、「当連盟は、副会長・理事長を始めスタッフが充実しているから大船に乗ったつもりで・・・」という引き継ぎの言葉をいただきましたが、それまで職域連盟という小規模の会長として10数年の経験があったものの、4000人を超える会員を持つ府柔連会長としての大役は身震いする思いでありました。府柔連会長の何たるやも分からないうちに、国体予選や近畿高段者大会等各種大会や、常任理事会、柔道安全講習会等の諸行事が目白押しに開催され、そのたびに連盟スタッフの教示を受け、敷かれたレールの上をただ走っているだけという感がありました。後ろを振り返る間もなくアッという間に1年が経った今、会長として何が出来ただろうか、何が足りなかっただろうか、何をどうしたらいいのだろうか等々を反省しつつ、巻頭言執筆のこの機会に、私なりの考えを述べてみたいと思います。
武道では、「心・技・体」の3要素の修得が理想像とされ、柔道も例外ではなく、好んでこの言葉が使われます。「技・体」の技術的なものは優秀な人材が揃っている連盟や傘下団体の諸先生方に委ねることにし、私はこの1年間、各種大会や講習会に出席し、また、柔道関係者との話の中で、柔道人、あるいは柔道に関係する者は「心」の充実、つまり徳育面の充実が必要ではないかと思うことが多々ありました。
ひとつの例として、「立つ鳥跡を濁さず」の実践です。
過去あらゆる機会を通じて、「挨拶をしましょう」「ゴミは拾って帰りましょう」など、各種大会や講習会、会議等々で何回も柔道ルネッサンスに基づく指導をしていることでありますが、大会や講習会におけるゴミ(ペットボトル、空き缶、包装紙、パンフレット等)の散乱が後を絶ちません。厳しく指導したときは一時的によくなるものの直ぐに実践されなくなります。そうした中を、大会関係者が遅くまで残って後片付けをしている姿を見て、本当に柔道大会後の光景なのかと、目を疑いたくなることがありました。
一般の市民感覚では、柔道を習っているのだから、柔道の指導者だからということで、道徳心やマナーは人並み以上に備わっていると思われています。それは立派な先人の方々が築いてきた軌跡であり一番誇れる部分でもありますが、それが今、ともすれば「柔道を習っているくせに・・・」に変わりつつあること、これは大いに反省しなければならないことです。原因はいろいろとあろうかと思いますが、せめて指導者として、「悪いことは悪い、良いことは良い」といったメリハリの効いた指導が求められます。体罰は許されないけど、最低限のマナーが守れない者には、強い口調で指導することも必要だろうと考えます。このことは、試合の応援に駆けつけた保護者や関係者等への メッセージにもしたい思いであり、道場だけでなく、家庭においても指導者と同一目線でしつけ教養は必要だと思います。
「私一人だけが捨てても・・」という考えは、塵も積もれば山となるの例え通り膨大な量に膨れあがります。 その後始末は誰がしてくれているのか等を深く考えてほしいのです。
「心・技・体」の3要素の中で、「技」や「体」が伴わずに強くなれない者は沢山いますが、「心」が伴っている者は、たとえ強くなくても社会人となった時は、強かったけど「心」が伴わなかった者よりも、きっと大きな財産となって自分の力になってくれると信じますし、過去の歴史が証明してくれています。
ただ、柔道を志す以上は、「心・技・体」の3要素の追求が理想であるし、それを求めるべきであります。その求める姿勢作りには、指導者に与えられた課題として非常に重たいものがありますが、「心・技・体」の中で「心」が一番先に掲げられていることからも理解できるのではないかと思います。こうした社会人としての最低のマナーが守れてこそ「さすがに柔道」と言われる所以だと思います。
試合で勝つことも大事、オリンピックで日本が金メダルを取ることも大事、怪我をしない丈夫な体を作ることも大事、みんな大事だけど、万人が万人、最も大事なことは「心」が充たされていることに異論はないと考えます。
「たかがマナー、されどマナー」 これぞ嘉納治五郎師範の究極の願いではないかと私なりに考えているところです。
せっかく与えられた巻頭言の機会に、経験豊富な指導者を前にして「ゴミは拾って持ち帰りましょう」等、平凡な内容になりましたが、京都府柔道連盟会長として「心」の充実を最重点に掲げ、柔道ルネッサンス精神の更なる浸透と、世界に響く「心」の柔道を目指し、日本柔道の更なる発展に少しでも貢献できたら幸いです。
(京都府柔道連盟会長)
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