今月のことば
2012年11月
監督と教師
矢野吉則
この度宮崎県柔道連盟会長を仰せつかり、宮崎県、更には日本の柔道界を盛り上げるように精一杯努めて参る所存です。
本誌の巻頭にあたり、自分自身の教師人生を振り返り、考えたことを思いつくまま記したいと思います。
どの競技においても、監督と教師は云うまでもなく同様な立場で、大事な人間教育の要となります。従って、様々なことにおいて教え導くことの出来る人が、監督であり、教師であり、それが指導者であると思います。その中には指導の上手な人、下手な人がいます。人それぞれやる気を高める要素があり、誰かに褒められてやる気の出る人がいれば、そうでない人もいます。個人個人にあった、やる気を高める要素を引き出し、それを掴ませるのが監督や教師のテクニックかも知れません。しかし、指導者がその立場に胡坐をかいていたのでは、人を指導することは難しく、謙虚な気持ちを持っていることが大切であり、加えて、監督や教師は、人に心から尊敬や信頼をされたとき初めて指導が始まるように感じます。相手に敬意を表し、尊敬の念があるところに教育や指導が生まれるのではないでしょうか。指導者たる者、人格や見識がしっかりしていれば、昨今の新聞等で報道される事件や不祥事はなくなるはずです。その監督や教師が立派であれば、会社でも学校でも信頼されるリーダーとして活気のある明るい職場になるでしょう。部活動では人間性が優れた部員が育ち、問題行動が起きない健全な部に育ち、競技力が向上することも間違いありません。監督とは「あの人の言うことなら間違いない」「あの人について行こう」と全幅の信頼の気持ちを起こさせる者でなければならないと考えます。
実際、部員を指導する中で、公平無私で平等の精神を持ち、部員の性格と特徴を把握して指導を行うのが普通ですが、地位や権力をもって人を指導しようとすると、それはすぐに反感や不満が出てきて、不祥事の要因となりかねません。やはり、公平で誠心誠意、面倒を見てやり、部員の意見を聞き、約束をしっかり守る。そして改善するところは改善し、良いところは取り入れ、部員が進んで練習するような環境を作るべきだと思います。また、部員の進路についても真摯に相談に乗り、自ら目標を持って柔道に取り組ませることが大切と思います。そして監督・教師は責任感を持ち、どんな事態や問題に対しても私情を挟まず、公平公正で誰にでも納得のいく正しい判断で指導をすべきであると考えます。
私は40年近く教師生活を送ってきました。その中で掴んだ教育の目的とは「子どもの自立心を促し、自分で判断し決断し行動できる能力を与え育てる」ことではないかと思います。このことを成し遂げるには1人の教師だけで出来るものではなく、保護者と協力して初めて子どもの教育ができると思っています。子どもが誕生した後、その子どもの初めての教師は親です。否応なしに親は教師としての役割を担います。子どもが成長すればするほど、様々な問題が出てくるので、常に学校の教師と保護者は手を組んで、子どもの成長に協力し合うことが大切と思います。しかし、近年、学校の教師の情けない事件・諸問題が数多く報道されています。教師というものは嘘をつかず、礼儀正しく、年上・年下の同僚に対して謙虚な態度で、他人の不幸を見捨てず、自分の言ったことに責任を持つ。そして、陰口、噂話をせず、情熱と信念を持って、教育に専念すべきであると思います。「二つ叱って三つ褒め、五つ教えてよき人となせ」これを自分自身のモットーに長年教師をやってきましたが、その成果と答えはいつになったらわかるのでしょうか。そう簡単に答えが見えてこないのが教育の奥の深さ、面白み、そしてこれがまた楽しみなのかもしれません。そんなことを思う今日この頃ですが、自分自身納得のいく教師生活でした。
最後になりましたが、全国柔道関係者諸氏の御健康と御活躍をお祈り致します。
(宮崎県柔道連盟会長)
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