今月のことば
2012年02月
国体を契機とした柔道の普及活動
篠田充弘
国体は毎年どこかの都道府県で行われていますが、その取り組みについては各県の事情により、それぞれだと思われます。
そんな状況で、平成24年度国体開催県として、国体を契機に今まで取り組んできた、柔道の普及活動について少し述べさせて頂きたいと思います。
岐阜県が「24国体」の呼称のもとに準備を進めてきた「ぎふ清流国体」は、昭和40年第20回岐阜国体から数えて47年ぶりに39競技の大会が全県的に開催されます。
岐阜県柔道協会としては、柔道競技を「大垣市総合体育館」で開催することとし、「競技面」においては必勝を期し、「運営面」においては「国体開催県への視察」や「リハーサル大会」を無事に終え、体制の充実に努めているところであります。
その他詳細については本誌、平成23年9月号に「岐阜国体のリハーサルを終えて」と題してその進捗状況を報告してあります。
国体の開催地が決定するのは10年前と言われておりますが、それを見越して本県の古田肇知事はスポーツ振興策として、「県民一スポーツ運動」を提唱して一・一運動としてその盛り上げを図ってきました。知事は47年前の岐阜国体で、聖火の最終ランナーを務められています。「ぎふ清流国体」の盛会成功を願い、協会員一同、共に力を合わせて、それこそ草の根の活動を尽してまいりました。
まず、柔道人口の増加と普及活動を図るため、県内各地区での練習会の開催に努めました。県内で初めて4面の柔道場を持つ施設「岐阜メモリアルセンター武道館」が平成元年に完成したことで、協会役員が主体となった、「金曜練習会」の開催もその一つです。
これは、毎週金曜日の夜に、少年の初心者から一般国体選手までを対象に練習会を開催することで、練習の機会を提供するというものです。この練習会は、新聞や地元広報誌で広報したことや、協会員による勧誘活動の努力もあり、多数の少年や一般選手が集まり、充実した練習が出来るようになってきました。「金曜練習会」と同じように、「火曜会」や「東金会」、「木曜練習会」など、毎夜どこかで同様の練習会が行われる環境も整って来ました。
この事業を始めるに当たっては、『柔道指導の手引き』という、基本から応用まで、分かりやすく解説した指導書を作成しました、この指導書は「岐阜県スポーツ科学トレーニングセンター」の支援のもと、岐阜大学の古田善伯教授らが中心となって作成したもので、写真を多用し、一般の選手や指導者も十分活用できる、充実した内容のものが完成しました。これを県内における各指導者に配布し、『柔道指導の手引き』に基づいた柔道の指導を推進しました。
第二に、岐阜県における選手強化対策です。岐阜県は少年柔道については、その歴史は古く、昔から強豪チームが全国大会などで上位入賞するなど、活躍しています。ところが、中学や高校に進学すると競技人口が減少してしまう傾向が特に目立つようになり、更に、全国で活躍するような優秀な選手もなかなか育ちにくくなってきました。柔道人口の減少は全国的な傾向でもあるようですが、県内の期待される選手が他県に流出してしまうことも一因です。
協会としては、部員が集まらず廃部になってしまうような高校に対して、本人への働きかけは勿論、直接学校に交渉したり、選手を育てた指導者にお願いし、本人に対する説得工作も試みるのですが、柔道人口の減少には歯止めがかかりません。県外流出についても、同様な対策を取っていますが、本人の将来の問題でもあり、親が県外指導者の説得に応じてしまう場合が多く、今後もその流れを止めるのは難しいのかもしれません。
第三に選手強化と柔道事故についてです。最近、「中、高で柔道事故多発」と言う見出しで、「2010年度までに発生した死亡事故114件、うち柔道固有の動作に起因する事故79件」で「特に中学生で多い」とのインターネット情報がありました。
本県では平成22年度に、小学生の死亡事故があり、1名が亡くなっています。この事故は現実的には避けられなかったかもしれませんが、この場合でも、そこにいた指導者が「どのような事故防止に関する認識を持って指導に当たっていたか」「事故後どのような措置を取ったのか」などが問題になると思います。全柔連においては『柔道の安全指導』のテキストを発行し安全指導の周知徹底を強力に進めておられるところです。
本県における中学、高校の柔道における死亡事故は起きていませんが、より厳しい選手強化訓練を行っているところでもあり、「安全な指導」と「選手の強化」について各指導者が研究を怠らず、協会においても安全指導講習を機会ある毎に開催するなど、指導者の資質向上に努めております。
特に、平成24年度から「中学生の武道必修化」が始まることから、全柔連の指導の下、中学校の指導者に対する指導を徹底し、柔道事故の絶無を図るように努めております。
柔道の基本は「受身」であり、その「受身」の指導を如何にしていくかが重要だと思います。 私たちの時代も、「受身の重要性」については厳しく指導を受けましたが、何れ分かるであろう受身の本当の意味を、今の少年たちに事故無く伝えるには、少年の特性を良く理解し、そしてその体力や実力に応じたきめ細かい指導を行うことが必要ではないかと思います。初心者は日を追って柔道に対する好感度を高め、投技も覚えていくものです。理想の形だとは思いますが、指導者が実践していかなければならない指導の仕方ではないかと思います。
岐阜県柔道協会は国体を契機にいろいろな施策を行ってきましたが、「山口国体」において柔道競技は、成年の部で男女共に五位入賞を果し、徐々にその成果が現れているところです。
また岐阜県選手団の総合順位は、天皇杯において四位、皇后杯は三位という好成績でありました。この勢いを平成24年の「ぎふ清流国体」に繋いでいけるように、県全体が盛り上がっておりますが、国体開催年だけではなく、それ以降においても国体を通じて培われた岐阜県の柔道環境を、今後とも継続、発展させていかなければならないと思っております。
(岐阜県柔道協会会長)
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