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今月のことば

2009年05月

教育柔道と競技柔道を考える

三橋秋義

 いよいよ文部科学省の学習指導要領の改訂によって、柔道・剣道が武道として中学校の正課に位置づけられて実施されることになりました。
 これまでは中学校の正課体育の中で選択科目の「武道」として指導が行われていたので、柔道を経験しないで卒業された生徒も多くおりました。
 これから武道として中学校での完全実施となった段階では、地域や学校の事情や条件によって違いはあると思いますが、柔道を実施する学校が多くなることが考えられます。
 この場合において最も重要なことは如何に良き指導者が得られるかであります。
 もちろん文部科学省においても、地方の教育行政段階でも指導者・施設用具等についての準備・計画をされていることと思いますが、指導者の研修や確保のためには我々柔道関係者も全面的に協力をしていかなければならないと考えています。
 本県においては各地域中学校において既に柔道の学習指導に取り組んでいる学校には、要請によって柔道連盟所属の指導者を派遣している現状でもあります。

 (一)指導者にお願いしたいこと
 中学校での正課柔道の指導においては、その指導内容・指導方法は共通で具体的に示されていますが、特に初心者の段階で十分に体得させてほしいのは、「礼法」と「受身」であります。
 「礼」には縦の礼と横の礼があること、縦の礼も立礼と座礼があり、その正しい形と礼の心について理解させること。
 横の礼には「合掌」・「握手」・「拍手」等がありその使い方を理解させること。
 受身の必要性は十分理解させて実践できるようにすることが重要と考えます。
 私はかつて中学生の指導をした際に受身の動機づけをさせるために自分の体験を具体的に話しました。その一つは学生時代に走行中の列車(現在の電車になる前の汽車時代)から転落したときのこと、いま一つは体操の吊輪で途中から落下したときのこと、辛いにも軽い負傷で済んで病院へも行かず元気になれたのは柔道をやってきたためである、と柔道に感謝をした話に生徒の真剣な眼差しを感じたことを思い出します。
 次に「技」についての基本指導では、正しい組み方、技それぞれの理合い(作り崩しと掛け方)、前技と後技、右技と左技について理解させて体得できるように指導をしてほしいと考えます。
 正しい柔道を身につけることによって、本来の技による投げ合い、攻防ができるようになり、柔道が安全で楽しく興味ある競技として多くの人達に受け入れられるようになるものと考えます。

 (二)競技柔道について
 現在世界中で行われているスポーツはすべて「○○競技」と言われて種目名がつけられています。
 競技は種目によって「個人」=対人でやるものと「集団」=チームでやるものとのちがいがありますが、どちらも競技としてやる場合には、試合(ゲーム)が行なわれ、組織的には競技大会として行われています。
 競技者となれば誰もが試合に勝ちたい、大会には優勝したいと考える、しかし大会での優勝者は一人である。従って競技者は大会での一位を目標にあらゆる努力を続けて大会に挑戦する。「勝つべくして勝つ」ことができた場合も、相手より諸々の条件が上まわっていただけでは勝てない、勝負運が拘ってくることがあります。昔からの教えとして「勝って驕らず、負けて悔まず」と言われているように、勝者は相手に対して勝たせて頂いた、という感謝の気持をもつこと、敗者は相手の実力が自分より上であったことを褒める心をもつことが大切なことであります。
 敗者となったとき、試合の敗因を詳細に反省して、次に向っての努力をしていくことであります。
 勝者には大会で優勝できたとき、そのことが大きな喜びであり、感激であります。
 個人的になりますが、私は学生時代、第一回関東学生柔道大会で幸運にも優勝することができました。その時表彰式で優勝杯を二杯頂きましたので、二位の選手に一杯を進呈してやりましたときのことを思い出します。

 むすびに、個人的な意見を述べさせていただきましたが、本県では来年国民体育大会が開催されることになっております。
 本柔道連盟としましても国体に備えての諸準備にとりかかっているところでありますが、取分け競技力の向上、選手の育成強化は急務の課題であり関係者一同努力してくれておりますが、目に見えての成果はなかなか大変であるのが現状であります。

(千葉県柔道連盟会長)

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