HOME > 今月のことば > 2005年04月

今月のことば

2005年04月

日本の治安維持と柔道

手島 皓一

 日本の治安維持と柔道という問題を取り上げてみます。先日どこかの県で駐在所の警察官のいる目の前で暴力団が騒いだのを注意するどころか警察官達はその場を逃げ出した事件がありました。住民たちが警察に言いますとそんな事件は無かったとの返事でしたが、調査しますと警察官達は暴力団の騒ぎが起こるとその場から逃げて関知しないことにしたとの事でした。このような事が実際にはあちらこちらで噂されています。警察官が一番大事な任務である治安維持がなぜ出来ないのかと考えますに、そこには警察官の質の低下があると思われます。その源を探れば今の社会の頭脳偏重主義に原因しているのです。これでは日本の大事な治安維持はどうなるかと案じられます。頭脳偏重主義と申しますのは採用試験で警察官の柔道、剣道の特技が一向に見てもらえなくペーパー試験が主でその他の体力的な技能は何等考えられてないのです。その結果ひ弱な無責任な治安担当の出来ない警察官が一部には出来ているのです。昔は警察官と武道は切っても切れないものでした。また採用にあたっても武道の経験者を多く採用し、採用後も必ず武道を練習させていました。私は九州の片田舎で育ちましたが、その小さな町の小さな警察署にも道場があり、警察官は、時間があるかぎり練習していました。だからその当時の警察官は体の大小にかかわらず体力的にも普通の人たちよりは勝り、彼ら自身も体力や柔剣道には自信を持っていました。現在の警察署にも道場はあるようですが本当に利用練習しているのは余り見なくなりました。各県の機動隊はある程度の練習はしていますが昔に比べれば非常に少なくなっています。そのため全日本柔道選手権でも警察官の出場が非常に減っています。昔は選手権を取る人も警察官に多かったのです。もちろん言い分はあるでしょう。昔と違って現在の警察官は勉強することが多くなったのだと、それなら尚更採用の時にもっと考えて武道も経験者を採用してほしいものです。頭脳的な学業もひとつの才能ですが運動、武道も同じくひとつの才能です。宮大工、漆芸家、佐官、陶芸家、画家等の諸芸技能が立派なひとつの才能でヨーロッパではこれらの熟達者を否定するようなペーパー試験だけを頼りに採用している為いい警察官が育たないのです。このままだと日本の治安はどうなるのでしょう。現代のように無法な外国人の多い社会では尚更体力の優れた警察官が必要だと思うのです。今のままでは暴走族が集まると逃げたり、暴力団が騒ぐと逃げ出し、夜間の巡回も出来るだけ明るい所を警邏するような警察官が出来るのです。昔のように日本の警察官は必ず武道で鍛えた体力と強い責任感を持った者を採用するような運動を起こすのも全日本柔道連盟の大事な仕事だと思います。スコットランドヤードつまりロンドン警視庁では今でも現場で働く警察官は身長180センチ以上の者を採用すると言われています。日本の大事な治安を守る警察官の採用にも武道の優れた、体力の勝ったものという条件を入れてほしいものです。果して現場で働くものの実状を各県の幹部、県警察部の幹部が把握しているのでしょうか。もちろん中枢には体力よりも頭脳に重点を置く必要の人材も要ると思いますが、現場では体力的な優位さと、それから生まれる自信が一番必要だと思います。ペーパーだけでは治安は守れないということをはっきりと知るべきです。そして頭脳偏重の考え方を訂正し採用基準も変更してほしいものです。全日本柔道連盟、いや会長が真っ先立ってこの点を政府なり警察庁なりに直接働きかけるべきだと思います。それによって大事な日本伝統文化である柔道も維持し、守って行くことにもなるのです。そうでなくては日本の大事な治安はますます低下し、無法が罷り通る国に成り下がるのでないかと案ずる次第です。全日本柔道連盟はぜひ警察官の採用にはある程度の人数は必ず柔道練達者を採用するような運動を起こしてほしいものです。そして責任感の強い体力のある警察官を育てたいものです。それが日本の治安維持には必須な事です。また今後の日本の柔道を学生、社会人、警察の三本柱で支えて行きたいものです。

(香川県柔道連盟会長)

最新記事