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今月のことば

2015年3月号

本県柔道界の発展を期する

伊藤綏之

 

 思いもよらぬ國安教善前会長の急逝を受け、第10代秋田県柔道連盟会長に就いて10ヵ月を迎えようとしている。歴代会長の方々は、柔道界あるいは政財界においても優れた業績を残された人たちで、私ごときで良いのかと不安を抱えての出発であった。

高校時代に柔道を志し、大学卒業後は37年間、高校教師として指導者の道を歩んできた。その自分の足跡と今後の展望を、本県の柔道活性化に結びつくことを念じて述べてみたい。

1.安全な施設の確保と柔道指導研究指定校
 指導者としての安全対策の始まりは、怪我予防のため、畳の下に緩衝性のあるスプリングを入れてほしいと要求したが、多大な経費がかかるとの回答に、自動車の古タイヤを畳の下に敷いて行ったことであった。その後、積極的な柔道指導が評価されたのか文部省(当時)の柔道指導研究指定を受けたことを契機に、コイルのスプリング設置が認められ、安全な柔道場が整備されたのは嬉しいことであった。  勤務していた学校は実業高校であったため、保健体育の実技授業数が普通高校に比べて少ない中で、3年間、男女とも1単位時間を柔道のために確保出来たのはこの上ない喜びであった。PTA総会において、このことを保護者に熱心に説き、理解してもらったことが懐かしい。その後も本県の7代目会長で第1回世界選手権者の夏井昇吉先生、日本武道館・羽川伍郎先生、マーストリヒト世界選手権65kg級優勝の柏崎克彦先生、ソウルオリンピック女子(公開競技)金メダリスト佐々木光先生から全校生徒に講話、実技指導をいただくなどして意識の高揚と実技の向上に努めた。

2.強化と自己研鑽に邁進
 当時、県内では中央地区・県北地区の実力が抜きん出ていて、私ども県南地区は後塵を拝し、時には弱いことを揶揄されたりしていた。少しでも追い着こうと様々なことを試みたが、中でも最も効果を挙げたのはサマーキャンプ田沢湖錬成会だと思う。田沢湖高原に県内外から高校生が集い、徹底して稽古に励んだ錬成会は年々隆盛を極め、県南地区のレベルアップのみならず県全体の競技力向上にも寄与したと思っている。
 また、少しでも全国レベルに近づこうと県外遠征も数多く行った。レベルが向上するにつれて春は国際武道大学での若潮杯、夏は新潟市の環日本海大会、冬は札幌市での松前旗杯等に参加し、全国の強豪校と対戦しながら切磋琢磨し、心・技・体の向上に努めた。

 自らも指導者としての資質向上を図るべく、日本体育協会公認スポーツ指導者「コーチ」資格取得に挑戦し、月々のレポート提出の他、日体協の中央講習会や全柔連の専門講習会などを受け、1年がかりで取得し、平成4年にはB級コーチに、更に平成17年には上級コーチに認定されるなど、研鑽を積むことには現在も心を配っている。

3.今後の本県柔道界の発展を目指して
 本県南部にある国指定名勝庭園で有名な大仙市高梨の池田家に、大正7年、14年、15年の3度にわたって嘉納治五郎師範が訪れ、講道館柔道の発展・普及、特に文化的精神(精力善用、自他共栄)の奨励指導のために講演している。この庭園のそばにある大仙市「ふれあい体育館」の玄関ロビーホールには、池田家と交流のあった証となる嘉納治五郎師範、三船久蔵十段直筆の書簡が展示されており、来館する人々の目を引き付けている。こうした由緒ある地域に恥じぬよう努力していかねばとの思いを強く感じている。

本県柔道界の現状は、少子高齢化の典型的な県として、柔道競技人口も減少の一途を辿っている。こうした現状を切り開くべく、各支部、スポーツ少年団、中・高体連などと一体となって事業の展開や見直し等に尽力していきたいと思っており、その一例を挙げてみたい。
 小学校の夏休み中に柔道の体験教室を開き、柔道の面白さや楽しさ等をPRして修行者の確保に努めたり、また大会の中に、これまで入賞したことのない人たちの部門を設けて感動を体験出来るよう配慮する試み等は大いに奨励したい。
 前述したサマーキャンプ田沢湖錬成大会は、田沢湖高原スキー場の再開発工事のため中断されていたが、関係機関の協力によって本年7月下旬に再開される見通しが立ち、東北各県、関東にも働きかけて参加チームを募り、県のアドバイザーコーチ制度も活用するなどして充実した柔道教室、練習会として再スタートしたいと思っている。中学校側からは、是非一緒に参画させてほしいとの意欲的な申し出もあり頼もしい限りである。

 新年早々の1月5?6日の2日間、全日本柔道連盟「柔道教室」が県立武道館で開催された。講師として大迫明伸、北田典子、小山昌規の3氏が来られ、県内小・中学生を対象に熱心に指導いただいた。オリンピックや世界選手権メダリストたちの得意技を間近に拝見できるとともに、稽古、試合に対する心得などを伺うことができ、本当に貴重な体験であった。特に印象に残った練習方法として、しっかり組んでからの乱取は、ともすれば組み手争いに終始している現状に、真の稽古はこうあるべきということを教えていただいた。そして毎日の練習を振り返り、練習日誌に記していくことは後々大変参考になるので、その習慣づけを説かれるなど本当に充実した柔道教室であった。今後もこうした事業には積極的に手を挙げていきたい。
 最後に、昨年5月に逝去された國安教善前会長のご尽力により、本年6月に第65回全日本実業柔道団体対抗大会が本県で開催される。大会の盛会を期して準備万端、実りある大会になるよう努力していく所存である。全国トップレベルの選手を迎えて、目の前で技の素晴らしさなどを体験出来ることは、柔道人口の拡大、強化などの面においてもこの上ない機会であると思う。是非多くの方々のご来秋を心からお待ちしている。

(秋田県柔道連盟会長)

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