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今月のことば

2022年1月

年 頭 所 感

講道館長
上村春樹

講道館長 上村 春樹

 令和4年を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

 本年は、講道館創立140周年にあたります。一致団結して、講道館柔道の普及・振興のために勇往邁進して参りましょう。
 そして、国内外からの多くの修行生が集い、賑やかな一年となることを願っています。また、一つでも多くの道場を訪れて皆さんと柔道を通して有意義な時間を過ごしたいと思います。

 さて、昨年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収まらず、緊急事態宣言の発令や様々な自粛要請などがあり、私たちの生活様式は大きく変わりました。そのような環境下、こんな時だからこそやらなければならない修行、こんな時でもできる修行があるはずとの考えのもと、皆で知恵を出し工夫し、感染対策を万全にして、寒稽古、鏡開式、夏期講習会、暑中稽古、紅白試合、高段者大会や全日本選手権大会など、講道館の恒例行事を大道場において開催することが出来ました。この講道館の歴史と伝統をつないでくださいました多くの皆様のご尽力、ご協力に感謝と敬意を表する次第です。

 10月には、生涯を講道館柔道の普及・振興に捧げられた醍醐敏郎十段が95歳にて他界されました。オリンピック直前まで柔道衣を着て道場に立ち、形や技の指導、研究に専心されていました。範となる柔道界の重鎮を失ったことは誠に残念でなりません。

 長引くコロナ禍によって世界的に困難な状況が続く中、夏にはオリンピック史上初めて1年延期となった2020東京オリンピック・パラリンピックが開催されました。感染対策を考慮し無観客での開催となりましたが、オリンピックには205の国と地域から33競技339種目に約11000名が参加し、パラリンピックには162の国と地域から22競技537種目に約4400名が参加し、世界のトップアスリートが心技体の限りを尽くして熱戦を繰り広げました。講道館でも感染対策を万全にしたうえで、世界各国の選手団を迎えました。「日本武道館で試合が出来たこと、講道館で調整練習が出来たこと」に対し、メディアブースでは多くの選手から感謝の言葉が聞かれたとのことでした。また、私自身もオリパラ後の海外出張の際、多くの方々から「日本だからこそ、開催出来た」との、感謝や労いの言葉を頂きました。

 日本代表選手団は、長年に亘る準備と自国開催の地の利を最大限に生かして、オリンピックでは金メダル27個、メダル総数58個の過去最高の成績を上げ、パラリンピックでは金メダル13個、メダル総数51個の過去2番目の成績となり大変な盛り上がりを見せました。その先陣を切って選手団に勢いをつけたのが柔道で、128ヵ国・地域から393名の選手が参加する中、金メダル9個、メダル総数12個の獲得と過去最高の成績を上げ、その試合内容も素晴らしく、柔道の醍醐味を感じて頂けるものでした。一方、パラリンピックの柔道競技は、今回が初めての東京大会で41ヵ国・地域から132名の選手が参加しました。近年、各国の競技レベルが格段に向上する中、苦戦を強いられましたがよく健闘し、銅メダル2個を獲得してくれました。この勢いを、2年半後の2024パリオリンピック・パラリンピックにつなげて欲しいと思います。

 オリンピック・パラリンピック後は、前期に出来なかった大会や行事が集中して開催されましたが、運営方法を工夫し、感染対策に取り組み、成功裏に終えることが出来ました。全国高段者大会では、高段者の皆さんが再会を喜びながらも、この日に照準を合わせて日々の鍛錬を積み重ね、試合に真摯に向き合う姿は、大変心強く、忘れえぬ光景となりました。やはり、道場の畳の上で、皆が時間と空間を共有し、熱意や雰囲気を体感することが、大切なことであると実感しました。

 また、海外や遠隔地での講習会は、昨年に引き続き、殆どがオンラインでの実施となりました。オンラインによる講習会は、対面での講習会をフォローアップする大切なツールです。配信方法やWEBコンテンツも拡充し、双方が要領を得て来ました。今後は、受身、打込、基本動作などについて、モデルとなる指導方法についても映像として残し、有効に活用してゆきたいと思っております。

 講道館では、以前、名選手の得意技シリーズとして、後世に伝えたい技の映像を残していますが、この度、現役を退いたオリンピックや世界選手権大会のメダリストの得意技のビデオ収録を行いました。単に試合で勝つための技術を集めただけでなく、基本技術とそれに工夫を加えて応用し、独自の技として完成させる過程もご覧頂けます。準備が整い次第、順次公開してゆきます。

 柔道の正しい理解と普及のために、IJFと取り組んでいる事業も継続しています。これまで、柔道の技100本の映像については完成させ配信しています。試合における礼法や審判員の発声・所作についての映像も収録を終えました。そもそも試合審判規定は、安全面への配慮とともに、お互いが正々堂々と、正しく組んで、理に適った技で、一本を取る柔道を実践できるように作られています。その原点となる組み方、投技、固技、立ち姿勢、寝姿勢等の定義とその判断基準を明確にするとともに、これまで通り「投げる」「固める」とはどういうことなのか、などの正しい理解を深めるための議論は継続してゆきます。

 年頭に当たり、嘉納治五郎師範が創始された講道館柔道の原点に立ち返り、「競技としての柔道」の発展と共に、「教育としての柔道」「人づくりとしての柔道」を地道に粘り強く推進し、先達が築かれた講道館柔道の伝統を受け継ぎ、更なる歴史を積み重ねるべく、「精力善用」「自他共栄」の実践に努め、国内外に講道館柔道の精神とその本質を発信してゆく所存です。

 館員の皆様には、本年もご指導、ご支援、ご協力の程、よろしくお願いします。結びに今年が皆様にとって良い年になりますようお祈り申し上げます。

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