今月のことば
2012年09月
130年目の始まり
立 川 克 雄
4月28日、講道館創立130周年記念式典・祝賀会の当日、式の前に永昌寺へ向かった。130年前の明治15年5月の創立当時の様子を想像する。8月には我が新潟県に縁(ゆかり)がある西郷四郎が入門を許されている。想像するだけでも何かわくわくするものがある。
1人でも門人を増やすため、師範や高弟が12畳の道場で寒さをしのぎながら入門者の門をたたく音をひたすらじっと待つ姿。受身で床が抜け、縁の下にもぐりこんで直す様子。勿論、書物からの想像だが、今の隆盛からは考えられない。当時は必死で柔道の発展を思っていたに違いない。
3月、本県柔道連盟会長就任時に何点か課題をあげた。どの項目も一朝一夕には解決が難しい厳しい問題である。
1.柔道人口の減少
? 少子化に伴う減少
本県の中学校の卒業生数の推移を見ると10年前の約3万人から6500人減、10年後には新たに3500人減、20年間に1万人の減となる。高校3学年、9万人から6万人である。この対策は如何ともしがたい。
? 部活動入部率の減少
本県高校の運動部活動入部者数から見る柔道部員の構成率は、10年前は3%であったものが、一昨年は1.9%となった。中学での経験者の柔道離れ、初心者の柔道への敬遠が著しい。柔道専門の指導者のいない学校への支援など手立てを講じなければならない。
? 早すぎる試合への警鐘
ともかく大会や練習試合が多い。今の小学生でも、私の大学時代より多いと思われる。レベルの差が大きい低年齢者を早く試合に出すのは、柔道離れに拍車をかけることになっているのではないか。
? 県外への流出
本県で育った柔道少年が県外へ流出するのは誠に忍びない。地方の柔道界から見ると大きな問題である。
2.重大事故多発
? 受身の確かな修得
柔道を始めたとき、「受身初段」と教わった。受身ができて初めて、昇段審査への受験を許してもらえる。みんな必死になって受身をやった。
? 生きた受身
中・高校生を見ると受身そのものはできる。しかし、乱取稽古ではできない。それとも、意識的に受身をしないのかもしれない。試合と練習はまったく違うものと教わった。乱取では、技を掛けるから技を覚えられる。当然、簡単に技が効くわけは無い。返されると「ようやく、返されるぐらいのいい技になったな」と言われたものである。技を掛けないことと、受身をしないことを戒められた。今の選手を見ると、乱取を試合と思っているから新しい技に挑戦できない、投げられても試合の「一本」と思うから受身を取らない。練習で怪我をするなんて愚の骨頂である。怪我をする可能性が少しでもあるなら自分から受身をすればよい。
?指導者
指導内容には当然適時性の考慮が必要である。その中でも個人差に応じた指導が不可欠となる。部活動も授業もそうであるが、技術指導は決して急ぎすぎないことである。大リーグのイチロー選手が言っている。「基本の積み重ねが大記録となった」。
3.授業としての柔道について
? 中学校の必修
平成20年に学習指導要領が改訂され、今年度から実施となった。必修により女子への導入、教員の指導体制での変化が予想される。いずれにしても、4年前に公表されており、準備期間は十分なはずでなければならない。不十分であれば当連盟として全面的な協力は惜しまない。
次の学習指導要領の改訂は、平成30年と予想される。後6年である。ということは、同時に見直しの準備が始まるということである。
? 高等学校の選択
平成21年に学習指導要領が改訂され、来年から武道は必修から選択で実施される。人気の高い球技(サッカー、バスケットボール等)との競合である。
先ごろ、講道館から頂いた、『講道館百三十年沿革史』によると、嘉納師範は、明治20年の始めには中等学校への柔道の採用を再三働きかけたが、一向に実現せず、ようやく、中学校令施行規則に柔道が選択制になったのが明治44年あった。実に20年もの間努力されたことになる。学校柔道の発展は私たちの使命として努めなければならない。
4.当連盟の目標達成のために
当連盟の目標は「柔道の健全なる普及及び発展並びに柔道を愛する者相互の親睦融和を図ること」である。3500人の会員と共に今後の発展に向かって努力したい。
130年目の始まりである。
(新潟県柔道連盟会長)
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