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今月のことば

2013年01月

年頭所感

講道館長 上村 春樹

 平成25年の新年を迎え、心より新春のお慶びを申し上げます。

講道館長 上村 春樹

 昨年は講道館創立130年の記念すべき年でした。
 3月には「スポーツ基本計画」が策定されました。「スポーツ基本計画」は、国、地方公共団体及びスポーツ団体等が一体となって施策を推進していくための重要な指針となるものです。スポーツを通じてすべての人々が幸福で豊かな生活を営むことができる社会の実現に向けた様々な取り組みが始まりました。日本のスポーツ界の更なる結束と総力を挙げてのスポーツの振興、発展が期待されるところです。

 4月には、中学校の保健体育の授業で武道必修化が完全実施されました。柔道界では従来の指導方法を継承しつつ、その安全性の確認を行うなど、円滑な導入のための準備に努めてきました。今後も柔道の持つ体育的価値、教育的価値の高さが伝わる楽しく安全な授業が展開されるよう、諸施策を充実させていきます。

 7月27日から8月12日まで開催されたロンドンオリンピックは、嘉納師範を団長として日本が初めて参加した1912年のストックホルムオリンピックから100年目にあたる大会でした。柔道競技においては135の国と地域から387名の精鋭が参加し、磨き抜いた技と精神を競い、世界の頂点を目指すとともに、国際交流を深めました。23ヵ国の選手たちがメダルを獲得したように、柔道は世界的に普及し、競技力は拮抗しています。
 オリンピックに続き開催されたパラリンピック柔道競技、また、10月にブラジルで開催された世界柔道団体選手権大会でも心技体の限りを尽した熱戦が展開され、大変な盛り上がりを見せました。ややもすると、競技としての強さや結果のみに目が向いてしまいますが、柔道は強さや結果のみを追求するものではなく、自己の完成を目指して、人づくりに重きを置かなければなりません。
 しかし、勝ちや勝ち方を追求する姿勢は重要です。勝ちや勝ち方にこだわるからこそ、厳しい修行にも耐えることができ、また己を律した生活を送ることができるのです。これがひいては心技体を充実させ、人を成長させることになるのです。

 一方、世界的にも形への取り組みが盛んになってきています。一昨年に始めたヨーロッパでの「講道館形講習会」を昨年もヨーロッパ柔道連盟主管で3月にイタリアのリニャーノで行いました。講習会には、20ヵ国から275名の参加がありました。この他、昨年は各国連盟からの依頼によって、形の指導者をフランス、カナダ、オーストラリア等に派遣しましたが、これまで以上に講道館への期待の大きさを感じております。
 また、9月にイタリアのポルデノーネで行われた第4回世界柔道形選手権大会では日本選手団が全ての形を制し、4連覇を達成しましたが、世界のレベルは著しく向上しており、回を重ねる毎に入賞国も多様化しています。本年10月には第5回世界柔道形選手権大会が京都で開催される予定です。より多くの国・地域から多数の参加者が集まり、日頃の修行の成果を披露されることを期待しています。 

 国際柔道連盟の試合審判規定等は4年ごとに見直しされることになっていますが、IJFでは幾つかの試行を行うことを決めており、重要な局面にあると感じています。本質を捉えた正しい柔道への回帰を目指したものは歓迎するところではあります。ただ規定を変えるのではなく、柔道本来の特性を守り、伝えていくことが重要です。そのためには指導する技術はもとより、柔道の持つ教育的価値を認識し、伝えることのできる指導者、審判員などの養成が急務と考えます。国内では今後ともこれまで取り組んできた指導者の養成を進めていく所存です。

 私が館長に就任して5年目を迎えようとしています。講道館も昨年4月1日には公益財団法人へ移行いたしました。これまで「嘉納師範が創始された柔道の正しい継承」を念頭に牛歩の如く、力強く前に進んできたつもりです。今思うに、強さに加えて柔らかく進むことの重要性も感じているところです。

 資料によると昭和20年以前に全国の道場、学校に掲げられていた数多くの嘉納師範の書額の中で、最も多かったのが「順道制勝」(道に順(したが)いて、勝ちを制す)です。「順道」の言葉は『礼記(らいき)』や『漢書(かんじょ)』などに見られ、「制勝」は『孫子』などにありますが、嘉納師範がこれらを組み合わせられたようです。「正道を進めば、結果に執着せずとも、終には自然(じねん)に勝ちを収める」といった意味となります。何かを成し遂げるための道程は山登りに例えられることがあります。山頂を見据えることが、挑戦への決意を促し、登り始めの初動の瞬発力となります。歩み始めるに先立っては最良の道を選び、歩み出したからには、頂上を仰ぎ眺めるばかりでなく、「正しい道を進んでいるか」「正しい歩み方をしているか」と常に脚下を見据えて歩み続けることが大切です。

 今年も初心を忘れることなく「精力善用」「自他共栄」の実践に努め、柔道の普及振興に全力を尽して参りますので、皆様のご指導、ご支援、ご協力を宜しくお願いいたします。

 むすびに、今年1年が皆様にとりまして素晴らしい年となりますよう祈念いたします。

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