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今月のことば

2007年06月

健康と柔道人生

松本 澄夫

 「この頃、身体の具合はいかがですか?」と聞かれるとあなたはどう答えますか?
 二十代、三十代の人なら「調子はいいですよ。元気ですよ絶好調ですよ」と答えると思います。まして柔道マン、スポーツマンならほとんどの人がそう答えるでしょう。
 四十、五十代で、果して絶好調ですよ、どこも悪くないですよと答える人は、家族も全員元気いっぱいですよと言える人ともなるとかなり少なくなるのでは?
 それが、六十代になるとどうでしょう。腰が、足が痛くって、目が霞んで、耳鳴りがして、身体がだるくってとか、また血圧が上がって、痛風、糖尿、肝臓、胃や腸にポリープなど、健康に陰りがでて気になっている人がかなりいるんじゃないですか。六十歳、人生まだまだこれからです。不安を取り除く事こそ楽しい人生になるのではないですか。健康であってこそ柔道を楽しみ、柔道の普及に力を注げるんじゃないですか?
 健康診断で数値が上がり要精密検査と言われた人、痛くも痒くもないので全く気にせずそのまま捨て置くと大変な事になりますよ。悪い体調が続く時、原因を調べず、素人療法でよくなったと捨て置くと大変な事にもなりかねません。
 健康のありがたさは、病に倒れないと分かりません。
 日頃は、健康が当り前。健康は、空気と同じ、あるのが普通で、健康であるのが当り前、特に柔道マン、スポーツマンのほとんどが自分は頑健と思っている。
 重く病み、大きく傷つく程、健康の有り難さが分かってくる。傷つき、病んではじめて十分気をつけようと考え、行動する。
 ことに生活習慣病などは、少々の事では日常生活に全く影響がない。すぐ治療すれば、完全に治る、捨て置くと大変なことになる。治療が遅くなればなるほど元には戻らないばかりか大変な合併症が現れる。
 ちなみに、私の場合、昭和六十年ごろ血圧150に120位、要精密検査と喧しく言われたが、全く自覚症状がないため聞き流し、ついには血圧180に140となり十日間の入院で正常にかえった。よく血管がパンクしなかった、運がよかったとしか言えません。 平成四年には血糖値138、五年158、月給は上がらないのに血糖値は確実に毎年上昇、平成七年ついに300を越え、ヘモグロビンA1cは10.4となり完全な糖尿病と診断された。かなりドクターに脅され、自転車で通勤、少しの間を見ては、身体を動かし運動に努めた。食い意地がはってるため、食べ物については気持ちだけの節食となったがそれでも数値がかなり下がってきた。その時点で、ちょっと努力すればすぐ元に戻るとの油断が芽生えたと思う。
 平成十年三月退職、その年の八月、脳幹部の梗塞で左半身と喉の痺れで、ひと月ばかり飲食できない闘病生活、口卑しい私にとって本当に地獄の日々でした。幸い、同級生の名医に救われ、適切な治療のおかげと、私自身も「何くそ、こんな病気」とリハビリに励んだ結果、ほとんど後遺症もなく完治した。
 喉元過ぎれば熱さを忘れるごとく、薬は服用していたが、糖尿病の薬は、よく飲み忘れ血糖値が上がり、最近は薬の量と回数増加を言い渡されていた、それでもやる気になればすぐ下がるとの安易な気持ちと痛くも痒くもないため、ついつい油断してしまった。
 今月一月、急に血圧が上昇(200の110)し入院となった。
 その時、MRI,造影剤を入れてのCTスキャンなどで脳底動脈の一本が動脈硬化で細くなっていることが分かり、ドクターから何時逝っても不思議でない。血圧を上げるとパンク、下げ過ぎると梗塞、おまけに、ここは手術も血管を膨らすこともリスクが大きすぎてどうすることも出来ない、現状維持しかない、よほど気をつけ摂生しないと、名前が変わってしまうぞと宣告された。
 しまった! 前回の病気の時、あれ程気をつけようと誓ったのにと悔やんでも、後のまつり。今度こそ摂生に努めようと心に誓い暴飲暴食を慎み、食生活を改善し、減量に努めている。おかげで八キロの減量となり、血圧・血糖値も一応正常となり薬の量も朝一回一錠となった。
 加齢とともに体調に変化が生じる、これは自然の摂理で仕方がない。
 体調に少しでも不安がある時、健康診断結果が気になることが見つかれば納得の行くまで検査し、治療をはじめ、摂生に努め、不安を取り除く事が大事である。
 もし不幸にして、発病したときは、「何くそ負けるか」の柔道精神で闘病生活、駄目だと諦めたら負け、それこそ柔道を取り入れた生活、闘病生活が大事。「力必達」回復を信じて努力すれば必ず回復する。
 転ばぬ先の杖、用心用心、不安や悪い芽は早く取り除く、暴飲暴食を慎み摂生に努め、健康に気を配り、自分を世に役立てる。これこそ「精力善用」。
 自分が快適で幸せになれば家族もそして周りも幸せで快適になる。「自他共栄」である。
 笑う門には福来たるである。健康は笑いを呼び、笑いは福を招く、私たちが健康になれば柔道も発展する。
 これが生活に柔道を取り入れ、柔道を生かした生活と考える。
 歳をとってもクヨクヨせず、若いといって安心せず、事に臨んでは「何くそ」で柔道を生活に生かし、楽しい人生にしたいし、してもらいたいと願っている。

(香川県柔道連盟会長)

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