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今月のことば

2019年9月号

柔道から教えられた自分

守谷 武


はじめに
 本年4月から、福島県柔道連盟会長に就かせて頂き、この重責に身の引き締まる思いである。
 現在、私は県柔連会長として、また38年間奉職した福島県警察の名誉師範として、各種大会や県内各警察署への巡回指導を行い、柔道の普及発展、さらに細部では、基本の重要性、練習中の事故防止思想の啓蒙に努めている。

柔道をはじめて
 私が柔道を始めたのは、小学校6年生の春だった。身長は普通だったが体重が重かったこともあり、相撲が得意で強かった。町内会主催の大会や神社仏閣の奉納大会等で優勝を重ねていた。幼少期からわんぱく坊主だった私を一番よく知る親、兄弟の勧めもあり町道場に入門した。
 当初は道場主はじめ指導の先輩から、特に礼法について、「立礼」「坐礼」の際の手の位置、頭の位置、角度等厳しく指導された。さらに練習では私が一番望んでいた乱取にはなかなか進ませてもらえず、受身や打込などの基本練習の反復が続き、身体ができ上がってやっと乱取ができたときの喜びを今でも思い出す。この時期に基本の大切さを教えて頂いた様に思う。
 今思えば道場における4つの礼(道場への出入りの礼、神棚への礼、先生に対する礼、お互いの礼)は特に厳しく指導され、この礼を通して相手を敬う心の大切さや、将来社会人となり役に立つことを教えられ、今でも実践している。

学生時代
 中学校では学校に道場がなく、空き教室に畳を敷いて練習し、終われば撤収作業の繰り返しという環境だったが、先生からは練習中決して手を抜かず、安全のための3つのキーワード「残身(心)、潔さ、命綱」を念頭に置き、事故防止に配慮しながら熱心に指導して頂いた。
 高校は、地元の商業高校へ進んだが部員が少なく、部員自らが体格の良い者や、柔道に興味のある者を勧誘しなければ柔道部を継続できない状況で、取り巻く環境もいまひとつであった。
 大学は、國學院大學に進み、数多くの恩師、先輩方に恵まれ、練習や対外試合を通して、心・技・体の充実強化を図った時期でもある。地方から上京し、先輩との練習で谷落や大車で投げられ、未経験の技に戸惑うこともあった。
 さらに、大学の先生から見せられた写真の中に、ある大学の先生が手の平に身長180cm、体重90kgの者を乗せ、片手を添えて持ち上げ、また5人の柔道部員(約400kg)を自分の腰、背中に乗せている写真を見せられたとき目を疑ったが、人は鍛えればこんなにもすごい肉体を作れることを知らされ、その時の驚きは今でも忘れることができない。「井の中の蛙大海を知らず」を痛感した次第である。

柔道と就職
 小学生から続けてきた柔道を活かせる仕事として福島県警察に奉職した。警察では警察術科として講道館柔道が取り入れられ、個々の警察官に対する心身の強化を図っている。警察に講道館柔道がなぜ取り入れられたか原点を記せば、嘉納治五郎師範が示した柔道修行の目的「柔道は、心身の力を最も有効に使用する道である。その修行は、攻撃防禦の練習に由って身體精神を鍛錬修養し、斯道の神髄を體得することである。そうしてこれに由って己を完成し、世を補益するが、柔道修行の究竟の目的である」から照らし、警察術科としての必要性、教育的価値が認められ、取り入れられ現在に至っている。
 私にとって柔道修行を通して得たものは計り知れないほどあり、まさに「柔道から教えられた自分」である。
 柔道は日本が世界に誇る素晴らしい武道であり伝統文化である。「精力善用」「自他共栄」の精神と先人の努力をあらゆる機会を通して伝承して行きたいと考えている。

県柔連の現状と取り組み
1 少子化に伴う柔道人口の確保
 県柔連と柔道スポーツ少年団の指導者や関係者が一体となって、ポスターやパンフレット等を使用しての勧誘や、団員・保護者を通して友人に対する口頭勧誘のほか、ホームページ等で柔道の魅力を発信している。
2 女性部会による女子中学生強化練習会
 県柔連女性部会では、本年7月7日(日)、NCVふくしまアリーナ(福島市体育館・武道場)において、県内女子中学生(約60名)を対象に強化練習会を実施した。女子柔道のレベルアップと女子指導者(12名)の育成を図った。
3 福島県柔道選手権大会の開催
 平成7年のふくしま国体に向けた強化策の一環として、平成2年2月から実施したものである。その成果もあり、ふくしま国体では、男女総合優勝することができた。この大会は現在でも続いており、福島県柔道選手権大会(毎年2月開催)は30回目の節目を迎え、全日本柔道選手県大会東北地区予選の選手選考を兼ねる県内最高峰の大会となり数々の名勝負が展開され、年々盛り上がりを見せている。今後もその魅力を発信していきたい。
                           (福島県柔道連盟会長)

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