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今月のことば

2017年12月号

「級位」に関する提言

松本澄夫


 人口減少に伴い柔道人口も減となり、連盟の収入も激減してきました。どこの講道館段位推薦委託団体も同じことだろうと思います。
 講道館や全日本柔道連盟は別として、傘下のどの連盟、協会もボランティア活動で運営されているのがほとんどです。
 ずいぶん前のことですが、有段者である学校の先生に「安い弁当で1日中使われるのは大変ですわ」と言われたことがあります。昔と違ってただでは動かない時代になってきていますが、それでもほとんどがボランティアであるのが現状です。

 講道館、全柔連は収入が減り運営に支障をきたすようになれば、昇段登録料や連盟登録費の値上げあるいは寄付金集めなどで資金を調達すればことが足りるのかもしれませんが、下部組織はそういうわけにはいきません。寄付金集めは、柔道のため、講道館のために動いても、借りができるのは寄付をお願いに行った者です。よほど柔道に理解ある人でも、喜んですんなりとは出してくれません。お願いに行った者は、自分が貰うわけでもないのに低姿勢にならざるをえなく、本当に苦労します。ある先輩が「人が飲み込んでいるものを吐き出させるのだから、低姿勢は当たり前だ。どんなに嫌なことがあっても我慢しなければならない。何もしないで金はくれんぞ」と言っていましたが、本当にその通りだと思います。
 江戸時代のように「生かさず。殺さず。搾り取るだけ」という考え方があるとまでは言いませんが、足りなければ値上げや寄付金集めをすればいいというやり方はやめて、大岡越前の三方一両損の裁きのように、三方納得(両得)の資金作り、つまり講道館、委託団体、修行者の三方が納得(得)するようにすることが一番です。

 かなり前のことになりますが、私は講道館に級位について提案したことがあります。しかし、その後講道館が実施した講道館級位の推薦制度は、私の意見とは全く違うものでした。級位取得者に入門料の半額である2500円と昇級料500円を納めさせ、入門料のうち2000円と昇級料のうち250円を推薦委託団体が講道館へ納めるというものでした。さらに、級位取得後に初段に昇段した際には、入門料の残り2500円を納めるという、手数がかかるもので、全く賛同できるものではありませんでした。私は抗議しましたが、あくまで任意といって取り上げてもらえませんでした。昇級の際に入門料の半額を納めるとすれば、入門願書作成の手続きも必要であり、初段昇段時に残りを支払うことになれば、他県から移って来た人などについては把握仕切れません。委託団体のたいした収入にもならず、中高生の負担も増えるだけで、何の益もない制度に思え、私には修行者や実施する現場のことを考えていないものにしか見えませんでした。他の連盟の方々も同じであったのでしょう。賛同する委託団体は少なかったようです。その後実情を鑑みたのか、講道館もいくつかの改善策を実施しましたが、講道館級位の推薦がそれにより大きく増加を見たということにならなかったのは周知の通りです。

 現場も納得する全国的に受け入れられるシステムを実施すれば、わずかな金額でも相当な収入になります。級の証書を1枚100円とし、それを委託団体に引き取ってもらうようにすればよいのではないかと思います。現在、多くの委託団体でそれぞれの一級認定審査を実施しており、聞くところによると、下位の二級、三級を発行しているところもあるといいます。本県では一級合格者に600円で証書を渡していますが、講道館の証書を希望する者には100円を上乗せすることとし、どちらかを選ばせるようにすれば本人の選択によるものであり値上げにはならないと思います。
 また、初段受験者は「一級」取得を条件にしてはいかがでしょうか。講道館の「一級証書」があれば全国で通用し、他県においても受験が可能になり、講道館級位を全国に定着させることになると思います。下位の級についても、委託団体が講道館の証書を与えるようにすれば、傘下の道場、少年団の子どもたちにやる気を起こさせることになり、講道館の証書を受け取り喜ぶ子どもたちの姿を見ることもでき、さらには講道館と委託団体の収入増加となります。

 現在、講道館では新たな級位制度について検討していると聞き及んでおります。講道館、委託団体、修行者の三者が満足できる理想的な制度を樹立して頂くようお願いします。全国の委託団体の皆様もご検討頂ければ幸いです。
                              (香川県柔道連盟会長)

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