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今月のことば

2005年07月

アジアの柔道の現状について

竹内 善徳

暖かな季節となり、国内での柔道界も活発な活動期になりましたが、海外に於いても各種大会や行事が催され、柔道の普及発展がうかがわれるこの頃です。
 この期に、アジアの柔道界の状況について報告させていただきます。
 去る五月十四日?十五日の両日、アジア柔道選手権大会が、ウズベキスタンのタシケント市で開催され、日本選手の活躍が目立ちました。今回、二年に一回開催されるアジア柔道連盟の総会も開かれ、幾つかの議題が討議され決定いたしました。
 国際柔道連盟加盟国も一八八ヵ国となります。アジア柔道連盟は、アジアオリンピック協会のシステムに従って五つのゾーンから成り立っております。各ゾーン及び加盟国数は、西アジアゾーン十一ヵ国、南アジアゾーン六ヵ国、東南アジアゾーン九ヵ国、東アジアゾーン八ヵ国、中央アジアゾーンが五ヵ国となります。アジア柔道連盟会長就任時、四十カ国以上の加盟国を目指して来ましたが、数カ国加盟し、どうやら在任中に目標が達成されそうな状況となり、嬉しい限りであります。全日本柔道連盟並びに講道館の援助・協力をいただいて、アジアの多くの国々に畳や柔道衣等を送っていただき、講道館柔道の精神と技術を拡められたことは誇りにしております。しかし、まだまだ充分な活動の出来ない国々も有り、マットの上で、柔道衣もなく、シャツに短パン姿で柔道の練習をしている道場もかなりあります。また、日本人指導者の派遣要請も多くありますが、なかなか困難な条件でもあります。
 アジア柔道連盟の正式行事として、アジア選手権大会とアジアジュニア選手権大会の二つを毎年、各々のセミナーを開催し、普及発展に努めております。アジアの中には貧富の差が大きい国々が有り、貧しい国々の柔道普及の一環として、アジア柔道連盟支援基金を設け、各ゾーンに毎年五千ドルずつの支援を行っております。畳・柔道衣・用具の購入やセミナー支援、大会支援金などに使われており、柔道発展の一助となっております。
 アジア国内の柔道レベル向上も目覚ましく、従来の強国である韓国、中国の地、イラン、ウズベキスタン、カザフスタン、モンゴル、台湾、北朝鮮等の活躍が目立ってきています。また、以前は少なかった国際大会を開催する国も増えて来て、レベルアップの一助となっております。
 試合を盛り上げ、さらに選手達の意欲をたかめるために、大会等で一本勝の多い優勝者へ「一本トロフィ」を与えたり、一番素晴らしい試合を行った優勝者を称える「ベスト柔道家」表彰をしたり、メダル獲得上位国(男女三位まで)の表彰等を行ったりしています。
 来年からは、ジュニア(十七歳以下)の大会も計画しておりますし、「投の形」「固の形」の二つの形の「アジア形選手権大会」も開催しようとしております。また、アジア柔道連盟独自で、コーチングセミナー参加等へ「コーチングライセンス」を与える制度も施行してみようとしています。行事が多くなりますが柔道の普及発展に良いものであれば行ってみようではないかとの考えは、アジア柔道連盟の役員の総意であります。
 アジア柔道連盟内は良いことばかりではありません。幾つかの問題も発生しました。宗教上の問題や政治上の問題が出てきたり、各ゾーン内の揉め事があったり、国内の連盟が統一されていなかったりとか、問題はありますが、少しずつ解決し、何とか良い方向へまとめていこうと思っております。
 柔道の本家日本のリーダーシップが大いに必要であると考えられます。皆様のアジア柔道へのご支援、ご協力を切に願ってまとめとさせていただきます。

(アジア柔道連盟会長)

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