HOME > 今月のことば > 2021年12月

今月のことば

2021年12月

雑感

河原月夫

 本年も様々な出来事があったが、無事に師走を迎えるに当たり、私の思うがまま一年を振り返ってみたい。
 世界的にコロナ禍が続く中、私たちは数多くの制約を受けながら、新しい生活様式の実践を求められ、また同時に柔道家は柔道衣を着て稽古をする機会を奪われた。日々感染者数が増加し、国内外を問わず様々なイベント等が中止あるいは延期を余儀なくされ、また経済活動も停滞し、世間は重苦しい雰囲気に包まれた。しかし、そのような困難な状況の中、一大スポーツイベントである東京オリンピック・パラリンピックが開催された。選手たちが全力を尽くして挑む姿を世界中の人々に見せることで困難に立ち向かう意志を共有するという開催の意義が示されたのではないかと考えている。
 スポーツを通じて、友情、連帯、フェアプレーの精神を養い、相互理解することで世界平和を目指すというオリンピックの理念は、嘉納師範が遺された「柔道とは心身の力を最も有効に使用する道である。その修行は攻撃防禦の稽古に由って身体精神を鍛錬修養し斯道の神髄を体得する事である。そうして是に由って己を完成し世を補益するが柔道修行の究竟の目的である」との考えと相通じるものである。
 愛知県柔道連盟が柔道を通じて後世に伝えたいことは、嘉納師範が目指された柔道を通じた人作りである。柔道は、我が国の武士道(日本人の生きる態度)を背景としながら、攻撃防禦の技術の修練によって身体精神を鍛錬修養する人作りの道であり、嘉納師範は柔道の持つ教育観として「国体を尊び歴史を重んじ精力を善用して自他の共栄を図れ」と説かれている。つまり柔道は技術的意義と道徳的意義の二者が一体となった教育であると私は考えている。今後、私たちが果してゆくべき責務は、先達によって築かれた柔道を後世に正しく伝えることであり、地道に「精力善用」「自他共栄」の実践に努め、柔道の普及発展に全力で取り組まねばならない。
 愛知県は、2026年にアジア大会の開催を控えており、私たちには国際交流・親善、世界平和のために選手、関係者、そして日本国民の安全を確保しながら、大会を成功に導くことが求められ、またその期待は大きいことが予想される。それに応えるためには準備を怠たらず、愛知県柔道連盟として一丸となり、精力最善活用で頑張る所存である。
 終わりに、「門前の小僧、習わぬ経を読む」とのごとく、父の道場で気が付いた時には柔道衣を着ていた私にとって、柔道とは人生の基本であり糧であり精神である。私は柔道修行の過程において、今まで計り知れないほど多くの教えを得ることが出来たと感謝している。柔道によって培った精神を最善活用し、今後も柔道の普及と発展に微力ながら尽力したい、それが私の願いでもあり目標でもある。
                     (愛知県柔道連盟会長)

最新記事