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今月のことば

2015年9月号

 

柔道との出会いと普及発展への取り組み

 

西 恒成

柔道との出会い

 昭和20年、私が5歳の時父がフィリピンで戦死し、その日から中学校卒業まで父親の実家に預けられた。頭が良くても高校に進学させる余裕がないと言われ、卒業と同時に寮がある柿木製作所に入社した。同社は金沢市にある機械メーカーであるが、社長は父親のいない私を大変気にかけ、仕事が終わった後は定時制高校に行って勉強するか、柔道で心身を鍛えるかどちらかを選びなさいと言われた。私は後者を選び15歳で岩井柔道塾に入門した。仕事が終わると自転車で、片道40分かけて柔道の歌を口ずさみながら通った。
 仕事はきつく、柔道の練習も厳しかったが、毎日充実した時を過ごすこととなり、お陰で心身共に成長し、今も交流を続けている柔道仲間も出来た。その甲斐あって、11年間勤めた柿木製作所を円満退社。26歳で独立し、西鐵工所を立ち上げた。
 私は「日々是新」を設立と同時に社訓として掲げ、自分自身の座右の銘にもしている。仕事とは、日々新たな課題との出会いである。積極的に向き合えば解決策、進むべき道が自然と見えてくる。日々心を新たにし、昨日とは違う、輝く自分を思い浮かべチャレンジしてきた。
フランス柔道の人気と石川県での取り組み
 ロンドンオリンピック柔道競技で女子57kg級に出場した、本県出身で私と同じ岩井柔道塾で学んだ松本薫選手の応援に、柔道仲間や私の妻も含めて8人で行ってきた。松本選手は素晴らしい試合ぶりで見事金メダルを獲得した。
 翌日フランスに立ち寄った際、ホテルのスタッフやガイドからも祝福の言葉に加え、柔道の質問をされるなど、フランスでの柔道人気の凄さを感じた。
 フランスでは体育の選択科目として柔道を選べるようになっており、約90%の小学生が柔道を選択しているそうだ。「礼儀」「規律」「尊敬」といった精神が、子どもの教育によいと考えられており、柔道は親が子どもの教育を補足するものとして重宝されていると聞いた。
 嘉納治五郎師範によって創始された講道館柔道は、「精力善用」「自他共栄」を根本精神とした、教育的価値を含むスポーツであり、外国でこの精神が活かされているのは嬉しい限りである。しかし、日本ではチャンピオンスポーツとしての競技柔道が主力となり、柔道の持つ真の良さが失われつつあるのではないかと感じている。
 日本の柔道人口は、残念ながらフランスとは逆で、年々減少しており、石川県も同様である。石川という小さな県の中で柔道の活性化を図るために、私は「競技力の向上」はもちろんのこと、「普及活動の強化」による柔道人口の底辺拡大に取り組みたいと思っている。
 「競技力の向上」に、少年・中学校・高校・大学・社会人等の強化選手による合同強化練習会なども必要ではないかと考えており、関係団体に働きかけ実現へ努力したいと思う。
 「普及活動の強化」は、大会や講習会等で「形」や「柔道舞踊」を披露することを考えている。そのことによって参加者の技能向上だけでなく、観覧席の人たちの興味・関心が高まれば普及活動の一助になるのではないかと思う。
 金沢市では、全国に先駆けて32年前から形選手権大会を開催している。その大会以外では昇級審査・昇段審査のための形練習しかしていないのが現状であるが、講道館柔道には7種の形があり、年齢・体力・段位に応じて練習することは形の習得、技の向上だけでなく生涯スポーツの柔道としても大切なことである。
柔道舞踊の復活
 柔道舞踊を日本で、正しく踊り、指導することが出来る人は、石川県柔道連盟女性部会長である長崎桂子女子七段の他数名しかいない。これを後世に残すために地方からの発信として、鈴木三郎副会長が編集委員長となり、女性部会を中心に解説書とDVDの作成を進めているところである。完成次第、お披露目を兼ねて講道館・全日本柔道連盟をはじめ各都道府県柔道連盟・協会にお届けしたいと考えている。何らかの形で活用して頂ければ幸いである。
(石川県柔道連盟会長)

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