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今月のことば

2015年1月

年 頭 所 感

講道館長 上村春樹

講道館長 上村 春樹

平成27年の新年を迎え、心より新春のお慶びを申し上げます。
 昨年も国内外において様々な大会や講習会が開催され、それぞれ大変な盛り上がりを見せました。

 8月にロシアで行われた世界柔道選手権大会、10月のマイアミでの世界ジュニア柔道選手権大会を観戦してきましたが、見応えのある試合が多くありました。技の攻防で決まる試合が多くなってきていますが、相変わらず、崩し、作り等の理合いを理解せず、組むと直ぐに掛けることを繰り返す選手も多く、今後の育成過程での課題として残っています。また、9月のスペイン・マラガでの世界柔道形選手権大会では、「柔の形」で世界5連覇を果した日本代表組がドイツ組に敗れました。この背景には形競技の世界的な拡がりと世界各国の形競技レベルが急速かつ確実に上がってきていることがあげられます。大会後に国際柔道連盟の依頼によって講道館から形の指導者を派遣し、審査員、各国の代表選手・指導者などの熟練者を対象とした形講習会を行いました。受講者たちの熱心な姿を見て、修行への真摯な取り組み、本物を目指す気概を感じました。

 昨年は、世界各地への「技」や「形」の実技指導の講師派遣は勿論のことでありますが柔道の基本的な部分、知識等の事項での依頼、要望が多くありました。

 春先に国際柔道連盟から、試合で多彩化する投技等に対処するため、講道館で「決まり技」「新技名称」を決めてほしいとの依頼がありました。決まり技については「技研究部会」で選考した「専門家」2名が委員会のサポートを受けながらこの任にあたっています。新技名称、個別の技のテーマについては「同部会」で引き続き検討しています。技名称に類似する技、系統の技は現在の技名称を使いますが、どの技にも類しない形(かたち)、理合いの技を現在の名称にくくることには無理があることから、新しい技名称を加えることも検討しなければならないと思っています。しかしこれらの技は、そのほとんどが古くから日本で「俗称」として使われてきているもので、無作為に増やすつもりはありませんが、2〜3の新たな技を追加する必要があると考えています。

 並行して、柔道用語の統一・解説についての依頼、相談がありました。我々が何気なく通常使っている打込、かかり練習、約束練習、投込、捨て稽古、連絡技、連続技、変化技、立技、寝技、摺り足、歩み足、継ぎ足等の言葉は、日本人には何となく漢字の意味から推測することもできますが、外国人はローマ字で書かれた名詞としての単語で理解しなければなりません。故に、これらの柔道用語の持つ意味を的確な英語で解説する必要があります。これまでに依頼のあったものについては技研究部会で議論を重ねて分類し、英訳して回答しましたが、今後は、2000年に発行された『和英対照柔道用語小辞典』を充実させた『柔道用語集』の制作に早急に着手します。

 近年、国際柔道連盟の役員や経験豊富な外国人指導者が、柔道をより良くし、柔道を正しく理解するためには「五教の技」を学ぶことが重要であるということを強く語りかけてきます。IJFが指導者育成のためにブダペストで大学と協同し開校している「IJF柔道アカデミー」でも、この「五教の技」の指導法を基にしたカリキュラムを組んでおり、「五教の技」と「形」の指導のために講道館から講師を派遣したところです。五教の言葉は、儒教でいう人の守るべき五つの教えであったり、釈迦の一代の教説を五つに分類したものが語源といわれています。嘉納師範は、技だけでなく、人格も含めて柔道を正しく身に付け、成長させるために、技の生い立ちやその理合い等、技術レベルの上達に合わせて段階的に学ばせるため、「五教の技」として第一教から第五教に分類した修行法として作られたものだと理解しています。

 この「五教の技」は明治28年に42本の技で制定され、大正9年に40本の技に整理し、新「五教の技」として今に至っています。しかし、現在では、国内の指導現場ではあまり活用されておらず、「五教の技」に対する理解、重要性の認識も薄れてきているのではないかと思われます。「温故知新」、今こそこの「五教の技」を深く研究、検証し、正しく理解した上で、必要ならば現状を踏まえて改訂を行い、国内外に五教の持つ意味、意義、技の理合い、学び方について正しく発信しなければならいと考えています。

 また昨年は、東建コーポレーション株式会社から協賛・後援を頂き、新たに「講道館青少年育成講習会」を展開することとしました。都市部と、これまで講習会等の機会が少なかった場所や離島で行います。本講習会は、子どもたちが技術、競技面に加え講道館柔道を正しく理解することを目的としています。「講道館国際ユースキャンプ」と併せて更なる事業を拡充し、国内外を問わず講道館柔道を通じた青少年の育成に努めていく所存です。

 年頭に当たり、本年も先達が築いてこられた講道館柔道の伝統、歴史に学び、地道に「精力善用」「自他共栄」の実践に努め、「後世に柔道を正しく伝えて行く」責務に全力で取り組んでまいります。

 館員各位のご指導、ご支援、ご協力を宜しくお願いします。

 最後になりましたが、本年も皆様にとってよい年でありますようお祈り申し上げます。

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