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今月のことば

2009年07月

生涯柔道の一つのかたち

岡本榮八郎

 5年前のことです。県下の柔友達との懇親会の折に、長寿と健康が話題となり、それぞれが"元気で充実した生活"を送るために、独自の健康法に励んでいるが、やはり、長年修行してきた柔道を通して、健康の保持に役立てたいとの声があり、「形の勉強会」を立ち上げることになりました。
 あの時からゆっくりですが、楽しみながら活動を続けていますので、そのあらましを記してみたいと思います。
 この会を柔栄会と名付けて、平成16年8月に第1回の勉強会を開きました。当初の参加者は15人、その後、何人かの入退会者がありましたが、この人数は、決して多いとは思っていませんので、これからも和を保ちつつ、多くの人達の入会を希望しているところです。
 しかし、たぶん本県に限らず全国的傾向であると思いますが、加齢とともに、柔道衣を着る人が減少してきていることは否めないと思います。このような現状を考えると、現人員でも良としなければと思うところもあります。現在、会員の平均年齢は72歳になりますが、毎回熱心に練習に励んでいる姿勢は、正に生涯柔道の実践者といえるでしょう。
 次に練習日ですが、毎月2回以上を目標に実施しています。時間は、午後1時から午後3時までの2時間とし、その後30分程度うちとけた話し合いをして過ごします。
 練習日が少ないことや、時間が日中であることは、先ず、上達の進度が遅いこと、つぎに、仕事を持っている人達が参加出来ないという、隘(あい)路はありますが、長野県内は地域も広く、集合するのも容易でないところから、現状に納得せざるを得ないのです。この会は、永く続けることも大きな目的であるからです。
 練習内容は、会員が高年齢高段者であるところから、最初は「柔の形」を、次に「五の形」を一通り学び、現在は「古式の形」に取り組んでいます。
 「古式の形」はさすがに難しく、体得するのに大変時間を要しています。しかし、回を重ねるごとに「古式の形」らしさが見えるようになってきたのは、継続の成果といえるのでしょう。
 形を学ぶには、先ず、それぞれの形の正確さを体得することが重要だと考えています。その上に、その形の持つ意義、目的が十分表現できるよう努めることだろうと思います。この二つが合致して、はじめて見る人を感動させることができる、"すばらしい形"となるものと思うのです。
 我々の勉強会がこの域に達するには、まだ相当の時間を要しますが、その過程で、柔道の奥の深さを知り、柔道の理に少しでも触れることができたならば、大きな収穫といえるでしょう。
 この勉強会の出発点は、形を学びながら健康を維持することでしたが、同時に、体得した知識、技能を、次の世代を担う人達に伝承してほしいと願っていたことも事実です。
 そのためには一層の練習に励み、「形」の域に達しなければと思っていますが、それが苦行でないことを願っています。やはり、我々の勉強会は"楽しみながら学ぶ"ことも、大きな目的であるからです。
 「形と乱取」は、修行の一体をなすものであることは認識しつつも、乱取の面白さに目を奪われ、「形」の修行をおろそかにしてきたことは否めません。しかし、「形」は高齢になっても学ぶことができるし、むしろ、生涯柔道に適しているのではないかと思うのです。今後も初期の目的を忘れることなく、新たな会員を募り、この勉強会を継続発展させたいと思っています。

(北信越柔道連盟会長)

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