今月のことば
2006年05月
地方からの発言
手島 皓一
地方から言いたいことを言わせてもらいます。政府では中央の権力をいかにして地方に委譲して行くかを真剣に考えているときです。全日本柔道連盟の中央と地方の関係を考えてみますと現在の柔道界は全ての権力を中央が握り、上意下達のまるで江戸時代の幕府の構造になり、しかも講道館との二重構造です。この二重構造については他日に譲ります。現在、地方は全く無きに等しいといっても過言ではないと思います。このままに行きますと全日本柔道連盟はどうなるかと案ずるものです。
一つの例を挙げます。三年前に私の県からある人物の昇段の件で本部にお願いをした事がありました。その人物は昔の武道専門学校を卒業し、柔道一途に一生を送り、沢山の弟子を育て、県の柔道界を戦後育てた人でした。その人物の死後追贈の昇段をお願い致しましたとき、その当時の責任者に段の権威の為に許可出来ないと申し渡されました。しかもその理由としてその人物が中央の仕事もしてない事をあげていましたが、地方に在住して中央の仕事がどうして出来ますか、はなはだ心外に耐えない言葉です。地方で柔道普及の為に一生を捧げた人に対してそれこそその人の立派な業績と権威を侮辱する言葉としか受け取れず、また中央の傲慢さを如実に感じたのです。中央の仕事が出来ない者でも地方で一生懸命に柔道の普及に努めている人が沢山いるからこそ日本の柔道は普及し、連盟は円滑に運営しているのです。そんな人物が存在してこそ日本の柔道は盛んになり会員は増加し、端的に言いますと会費も集まっているのです。これは一つの例として挙げましたが、中央が地方に対しての考え方の一典型だと思います。あるいは此の人物だけの思い上りかも分かりませんが果してこれでいいのでしょうか。地方の柔道の仕事をしている人たちは全て一銭の報酬も受け取らずボランティアで行っています。極端に言えば金を集めて全日本柔道連盟に送っているのです。中央はこのような人物を発掘して昇段させ、また功績を称賛してこそ柔道は広がっていくものです。中央は地方が存在してこそ成立するものだという事を考えずにどうして成長がありますか。現在の中央の方々は地方とは会費を集める所だと考えているとすれば、いつの日か中央も消えて行くことになるでしょう。その証拠に現在全日本柔道連盟の登録会員数が次第に減少していることを考えてみれば理解できることでしょう。現在の全日本柔道連盟のやり方は上意下達のみで上意下達と言うことは一切無いようです。また今回の昇段規則の改正にしましても地方にありましてははなはだ不利になるものです。中央集権主義としか言えない、時代に逆行するものです。
さて次には現在行われている柔道ルネッサンスの事です。その中でも礼法をきちんと守らせることが大事だと言っていながら指導者からして道場の出入り、まだ寒いときの格好と言いますか、選手が真剣に試合している間、指導者たちは道場内でも防寒着やコートを羽織りぬくぬくとしているのです。昔の指導者は道場にある時は和服であれば紋付羽織袴であり、背広であれば必ず上着とネクタイを着けていたのです。昨年からクールビズの世の中になりましたので一概には言えませんが、ある程度の服装を正すことが指導者として大事な事だと思うのですがいかがでしょうか。更に道場の出入りでも正面に向かって一礼する指導者は皆無です。また勝者が相手への礼も終わらないのにガッツポーズを取っている姿は決して好ましいものではありません。日本の柔道は勝っても相手の敗者に対しての尊敬といたわりを決して忘れなかったのです。その証拠に投げても引き手は離さず相手の受身を助けていたのです。それこそが柔道でした。更に最近の日本の柔道試合会場では、まるで相撲の弟子のような脂肪太りだけの連中がトレパンだけの姿で、だれが来ても挨拶一つぜず全く不作法な格好でいるのをよく見ますが真にみっともない事です。同じ大きくても相撲の力士たちはあの大きな体は鍛え上げた体です。その証拠に短時間の土俵の中でも俊敏に動きしかも必死に戦っています。それに反して、柔道の選手たちは重さだけで組み手争いをして時間を過ごしています。国体の柔道を見ていましても殆どの観光客達は「柔道はさっぱりおもしろくない」と言って立ち去ってゆきます。世の中が柔道に対する興味を失ってきている何よりの証拠です。以上、わずかの例を挙げましたが日本の柔道界が本当にルネッサンスを期するならこのような不様な事は早く一掃し、昔の日本伝講道館柔道に帰るべきです。そのためには講道館の幹部達と全日本柔道連盟の幹部たちが虚心に返り考えてみることが大事だと思います。そうでなければ日本の柔道はますます衰えて行くことになるでしょう。
(香川県柔道連盟会長)
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