今月のことば
2018年3月号
一地方組織の振興に取り組む
市川平治
はじめに
私は昨年4月、夢にも思わなかった経緯で第9代群馬県柔道連盟会長に就任させて頂きました。思えば、12歳で初めて柔道衣を身に着けてから70歳の今日まで、いろいろな立場で柔道に関わって来ましたが、戦績や指導実績と言えるものは何一つ無く、また、柔道に関する高い識見を有する訳でもありません。まさに、名もない末端の柔道愛好者の1人に過ぎない私であります。
しかし、お受けした以上は、微力ではありますが群馬県柔連の組織運営と選手強化に誠心誠意取り組み、一地方組織の振興を通じて日本傳講道館柔道の普及発展に努めたいと思います。
この度、この様な機会を与えて頂きましたので、他県に比較して特筆できる点もありませんが、群馬県柔道の現状と今後の抱負について報告させて頂きます。
群馬県柔道の現状
まず、本県においても例外ではなく、修行者数の減少が喫緊の課題となっており、特に、小学生の修行者が中学、高校と進むにつれて柔道から離れる傾向は、何としても対策が急がれるところです。
競技成績を見ると、過去には、本県で開催された昭和44(1969)年の「全国高校総体」での前橋商業の3位入賞を始め、昭和58(1983)年の「あかぎ国体」では、少年の部で優勝、成年の部で準優勝という成績を残しましたが、近年では、ストレート種目以外は関東ブロックの壁に阻まれて国体本大会に出場できない状況が続いています。
しかし、昨年は醍醐敏郎杯全国少年柔道錬成大会で、新田柔道スポーツ少年団が高学年の部と低学年の部で優勝。全国小学生学年別大会では、トーレス・カミラ選手が5年生に続いて6年生でも優勝したことは、同世代の修行者に対して良い刺激になるものと考えます。
また、10年後の第83回国民体育大会の群馬県開催が内定して、目標を設定しやすくなったことを契機に、更なる強化策の充実を図りたいと思います。
組織運営と強化対策
① 本部役員組織
新体制になり、まず6名の副会長に「学校」「実業団」「国際交流」他の役割分担をお願いし、各々の大会や行事に積極的に関わって頂くことにしました。
さらに、従前から行われていた「正副会長打合せ会」を「定例幹部会」と位置づけ、正副会長・正副理事長・正副事務局長をメンバーとして、毎月定例的に会議を実施して情報の共有と意思の疎通を図っています。
また、全日本レベルで活躍した椛澤博之、今川直明、岡泉茂の各氏、女子では石川弘子(旧姓北爪)、國原頼子の両氏を始め、「全国高校総体」や「あかぎ国体」等で活躍したメンバーの多くが、本連盟の主要な役職に就任し、組織運営や強化対策の中枢として関わってくれていることは心強い限りです。
② 強化練習会の実施と事故防止
強化の一環として、毎週火曜日の夜に県武道館において「合同強化練習会」を開催しています。実は、休眠状態になっていた県柔連練習会の復活が定例幹部会で話題となり、早速、各方面に呼びかけて昨年末から実施していますが、小学生から大学・一般まで、200名ほどの参加があり活況を呈しています。
それと共に、合同強化練習会での事故は絶対に許されないものと、特に注意を払っています。一般的に事故防止は、危険を未然に察知する指導者の資質も求められるものであり、学校や柔道教室、町道場などに対しても、日ごろの啓発に加え、研修等を通じて指導者の資質向上に努める所存です。
③ 教員配置に関して
柔道振興の中心的役割を担う学校柔道において、教員の配置が重要な意味を持つことは言を俟ちません。もちろん、学校人事に柔道の都合だけを主張することは出来ませんが、その一方、人事権をもつ県や市町村の教育委員会担当者に、柔道指導者に関する的確な情報が届いていない面も否定できません。その様な視点から、教育委員会に対する積極的な情報提供を継続しています。
④ 大会誘致
2019年には高校関東大会と全国実業団大会が、2020年には日本武道館改修に伴う春の全国高校選手権大会の本県開催が決定しています。
特に、全国レベルの大会運営に携わることは、関係者の意識の向上も期待でき、また、この機会にやや低迷している本県の実業団柔道の振興にも繋げたいと考えています。
国際交流の歴史と今後
群馬県の柔道を語る上で、是非とも触れておきたいのはハンガリーとの交流です。これは、昭和39(1964)年の東京オリンピックで、若き日の山本崇夫八段(故人)がハンガリー選手団の世話係となり、そこで芽生えた、レスリング選手コズマ・イシュトヴァーン氏(故人)との友情が原点となっています。
以来、群馬県とハンガリーが交互に選手団を派遣し、柔道の試合や文化交流を重ねて来ましたが、これらの活動が実を結んで、2020年の東京オリンピックでは、ホストタウン構想として群馬県前橋市がハンガリーの柔道選手団とレスリング選手団のキャンプ地に決まりました。
私たちは、半世紀前にスポーツを通じて結ばれた、日本とハンガリーの青年の友情を、これからも大切に伝え育んで行きたいと考えています。
結びに
私は社会生活の大半を、高校の教員と田舎の地方政治(村長、村議)で過ごして来ましたが、その間には、本当に数々の場面で柔道修行から学んだものに支えられたことを痛感しています。そして、更にその思いを強めさせられたのが、柔道MINDの標語です。柔道精神が具体的な言葉で示された、「礼節」「自立」「高潔」「品格」は、柔道修行に限らず、人生のあらゆる場面での大切な行動規範と言えるでしょう。
これからも、これを正しく後進の青少年に伝えると共に、私自身の指針として柔道MINDを胸に、講道館柔道振興の一端を担うことが出来れば幸いです。
(群馬県柔道連盟会長)
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