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今月のことば

2012年06月

柔道の魅力にひかれて

本村 龍太郎

 昨春、分不相応な長崎県柔道協会会長を仰せつかり、右往左往する間に1年間が過ぎ去りました。
 私はかねがね「柔道」とは不思議な魅力を持つ武道(スポーツ競技)であると思っています。例えば、初対面の人が柔道経験者と判明すると、旧来の友人であったかのようにたちまち打ち解けて、会話がはずんでしまいます。その場には、年齢差も職業差も一切消失してしまいます。体形を見て、得意技を想像できるのも楽しいことです。試合場で畳へ上って、対戦相手の襟、袖を握り合った感触で、瞬時に勝負の結果が予想されるのも、柔道ならではの不思議な現象であると思っています。現在に至る人生で、最も健康に自信があったのは、青春時代柔道修行に励んでいた頃でした。何よりも、若い世代と共に柔道に携わることは気分をリフレッシュさせる最大の源となって来ました。このような、不思議な魅力にひかれて、職種の異なる畑違いの柔道の分野へ、日体協公認スポーツドクターあるいは審判員の役割で関わって来ました。
 嘉納治五郎師範は「柔道の技を練習する」ことにより、「心身の力を最も有効に使用する方法」を習得して、「人事万般の事物に応用する仕方」を会得できると説いておられます。この教訓は、「柔道」は人生のあらゆる場へ通じる「道」であることを示しておられます。則ち、
(1) 規律と礼儀作法を重んじる心を涵養して、健全な社会人となる人間形成の「道」へつながること。
(2) 鍛錬を重ねても、自からの能力の限界を知ることにより、対人への尊敬や謙譲の精神が生れる「道」へつながること。
(3) 柔道技量習得のため、日夜反復鍛錬を繰り返すことにより、人生で遭遇する苦難を乗り込える忍耐心や不撓不屈の精神が培われる「道」へつながること。
(4) 日夜反復鍛錬を繰り返すことは、勉学上や社会業務上の知識の習得の努力と同種の行為であり、学業面や社会業務面における成功達成の「道」へつながること。
(5) 集団の和と協調を学ぶことにより、健全な社会の集団生活を営める「道」へつながること。
などのように、「柔道の鍛練」は現代の学校や家庭教育では学べない「心身修養の基盤」となっていることが、示されていると考えられます。
 私事になりますが、私の経営する精神科を標傍する光仁会病院(561床)は病気の性質上暴れる患者も多く、体力のある看護人が求められる職場です。その点、柔道経験者は競技を通じて得た良好な接遇、道徳倫理感、気力、体力および忍耐心など、看護に必要なすぐれた条件を身につけています。そこで、平成18年より柔道経験者を採用して看護師の資格を取得させ、医療現場へ次々と送り出す事業を行なっています。同時に、団結心を強める意味あいで柔道部を発足しました。当初は2名だった部員も現在は23名(男子18名、女子5名)の大世帯となりました。彼らは不規則な勤務や学業の合い間の練習で、平成21年初出場した九州実業団大会(3部)で優勝。次いで平成23年には初出場した西日本実業団大会(3部)で3位、九州実業団大会(3部)で再び優勝して、山口国体には県代表選手として1名を送り出しました。
 本年度は新道場を設立したのを機に、中学校の武道必須化の流れを受けて、当院も少年柔道クラブを設立して地域支援活動に乗り出す予定です。
 終わりに、不思議な魅力をもつ柔道に関わりながら余生を過せればと念じています。

(長崎県柔道協会会長)

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