今月のことば
2014年11月
講道館柔道の発展を願って
関 勝治
本年4月千葉県柔道連盟10代目会長の重責を担うことになり、身が引き締まる思いでおります。
これまでの歴代会長はじめ、了?寺健二前会長の柔道普及・発展に心血を注がれた志をしっかり継承し、更なる県柔道界・講道館柔道の発展のために、全力を尽す所存です。
月日の経つのは本当に早いもので、私と柔道との出会いは昭和29年中学3年生の時でした。千葉県市川市の加藤幸夫先生の道場に入門、卒業後、内弟子として柔道と接骨の修行を始めてから、早や60年余りの歳月が流れました。顧みますと、数々の思い出が昨日のことのように脳裏を去来しています。
高校生として、初めて全日本柔道選手権大会に出場できた時の、あの感激。明治大学時代には全日本学生優勝大会で4年間、深紅の優勝旗を握れたこと。実業柔道時代には日本中央競馬会の監督として、また、フランスナショナルコーチとして海外指導に行った2年間のこと等々。この間ご指導頂いた多くの先生方や先輩、同僚、そして仲間たちのお蔭で柔道と深く関わりを持つことができ、柔道を通して得た貴重な教訓・体験が私の人生の支えであり、また、生き甲斐となっており、心より深く感謝している次第です。
日本の伝統文化である素晴らしい講道館柔道を後世に正しく伝承していくことが、これからの私の柔道に対する恩返しであり、また使命であると考えています。
この度、講道館より寄稿依頼があり、この機会をお借りして、日頃の柔道に対する想いの一端を申し述べたく思います。
1.柔道人口減少の課題と対策
平成25年度の柔道登録人口が前年度比6207人減の16万9333人と17万台を下回りました。これは、登録者全体の統計を始めた平成元年度以降初めてのことで、全国的に柔道人口の減少は憂うべき状況になりつつあります。早急に要因究明、対策が必要であると思います。
今、柔道の故郷である町道場の入門者も少子化及びスポーツに対するニーズの多様化などにより、年々減少傾向にあります。また、町道場で育った子どもたちが中学校に柔道部がなく柔道から離れていく。柔道部があっても指導者不足等で廃部されていく。中学校、高校の柔道部の数も入部数も年々減少しつつあり、歯止めのきかない現状ではないでしょうか。
私が以前にナショナルコーチとして、また全実柔連の柔道調査でお世話になった柔道強国フランスの柔道人口は、現在56万人といいます。柔道はサッカー、テニスに次ぐ3番目に人気のあるスポーツとして国民に広く親しまれています。
フランス柔道連盟は、スポーツ省が所管する国の機関で、現在ダビド・ドゥイエ氏がスポーツ大臣として活躍されています。
柔道指導者は、国が認定するコーチ有資格者で社会的信頼関係も築かれております。この様な環境のもと、柔道は「教育的価値の高いスポーツ」として、また「道徳・精神を養う価値あるスポーツ」として広く国民に受け入れられており、嘉納治五郎師範の「精力善用」「自他共栄」の精神がフランス人にしっかり根づいています。フランス柔道連盟は、柔道人口増加のためにスポーツ省と一体となって、柔道の教育価値を前面に掲げ、柔道のイメージアップのPRを、また、初心者・子どもたちには、多くの楽しい練習メニュー等を取り入れ、柔道の魅力・素晴らしさを伝える施策を積極的に展開しています。
日本においても、今こそ嘉納治五郎師範の教えの精神、柔道の心に立ち返り新しい柔道界の構築を目指すとともに、特に将来の柔道を担う子どもたちの指導については、安全、安心で楽しさを重視した「初心者用指導法」及び「段階に応じたきめ細かな指導法」等のマニュアルを作成し、柔道の魅力や素晴らしさ、そして安全性をもっとアピールすることも必要だと思います。また、「町道場への支援」、「中学校武道必修化実施に伴う授業の充実・安全指導」、「中学校での指導者の増員・養成」、「中学校部活動への外部指導者の派遣」及び「生涯柔道の推進」そして、「柔道経験者(途中で止められた方々)の復帰推進」等々の対策について、総合的に取り組むことにより、柔道人口の増加に繋がっていくのではないでしょうか。
? 少年柔道普及(少年育成)の取り組み
講道館柔道の発展は、日本の将来を担う青少年、特に小中学生の子どもたちの育成なくしてはありえません。前述の通り柔道人口の底辺拡大は「町道場」の振興にかかっています。ご存知の通り町道場の先生方は、子どもたちの将来に夢を託し、技術指導はもちろん礼儀作法、柔道精神の大切さ、時には学校の勉強等を教え、子どもたちの健全な育成に情熱を持って日々努力されています。
そして、道場で育った選手たちが中学・高校で、また大学・実業団で活躍すれば、我が子のように喜び、後援活動に力を注ぐ。一生涯子どもたちと心の絆を育み、その成長を静かに見守っていく。将に町道場は子どもたちの柔道の故郷であり、地域の学校でもあります。
講道館柔道発祥の原点である町道場に昔の時代のような活気ある繁栄をもたらすために、いかなる支援、後援対策を講じていくべきか、今こそ総力を挙げて取り組むべき重要課題ではないでしょうか。
私の恩師である加藤幸夫先生は、まだ全国的に道場連盟組織がほとんどない昭和44年に「町道場の振興と少年柔道の育成・普及なくして柔道の将来はない」との強い信念のもと、県下各地区、道場を東奔西走され、昭和44年10月に「千葉県柔道道場連盟」を創立されました。
本県少年柔道の普及・発展については、県柔道道場連盟が主たる事業として40年以上の長きに亘り、各地区、町道場の先生方と連携を図りながら歩んできました。
まだ県大会及び全国大会がほとんど行われていない昭和45年10月に、記念すべき「第1回県柔道道場連盟少年柔道大会」を開催して以来、歴代会長の志を引き継ぎ、現在私が4代目会長として春に団体戦、秋には個人戦と年2回の県柔道道場連盟主催による少年柔道大会を開催しています。
また平成14年からは、県柔連主催の県少年柔道大会を、平成15年からは全国小学生学年別柔道大会の県予選会を開催するなど年4回の少年柔道大会を通して、子どもたちの育成及び正しい柔道の普及・発展に努めているところです。
更に、平成23年からは、少年育成事業を県柔連の最重要課題として位置づけ、「千葉県柔道連盟育成部」を新設、全県下一体となった組織により、本格的な活動がスタートしました。杉崎彰彦育成部長はじめ各担当の先生方の情熱溢れる指導のもと、年間練習計画に基づき毎月1回の定期合同練習会、年2回(6月と10月)の千葉・茨城・神奈川3県での合同合宿練習会を実施しています。また、本年10月の合同練習会には、福島県も参加し4県合同で行いました。
子どもたちには、技術指導のみでなく、「日本伝講道館柔道」・「柔道の理念」についての柔道の精神・柔道の心について解りやすく教示し、正しい柔道の普及に全力を注いでいます。
千葉県柔道連盟は、「講道館柔道の発展は、少年育成が原点であり、源流である」という基本理念のもと、この育成事業が関東一円はもとより全国各県とも連携を密にし、広く交流の輪が波及していくことにより柔道人口減少の歯止め、町道場の振興及び少年柔道の普及・発展に繋がっていくものと期待しています。
今後も県柔連一丸となって育成事業を積極的に推進して行きたいと強い決意を持っております。
結びに日本伝講道館柔道の益々の普及と発展を心からお祈りいたします。
(千葉県柔道連盟会長)
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