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今月のことば

2007年02月

「美しい柔道」への取り組み

石黒 光祐

 今年は嘉納治五郎師範が柔道を創始してから125年という節目の年を迎え、いよいよ「世界の柔道」と言われる「柔道」に大きく発展した。ここで「美しい日本」という安倍首相にあやかって「美しい柔道」に取り組みたい。
 「一本」になる技、中でも素晴らしい美しい技で投げることのできる選手を目指し練習に励んでほしい。世界に羽ばたく立派な選手に育ってほしい。また、「形」として美しく演ずることもできると思います。このことについては後述したい。
 ここで、地方柔道の歴史を見てみたい。江戸時代の越中富山においては、加賀藩の支配下にあって、四心多隅流和(ししんたくまりゅうやわら・四方八方から攻め入る敵を攻略する柔術)、起倒流柔術等、各流派の柔術が道場中心に盛んに行われた。例えば、伝書によると、森田滋次郎道場は四代に亘って盛んに「和」が稽古され、女性らは恐かったと言っていた(現在道場はない)。明治期の柔道は、伝書(富山県立図書館蔵)を持つ起倒流柔術が中心であり、徐々に講道館柔道に移行していった。試合には必ず「形」が行われた。それは大正、昭和と続き、役員が競って「形」を演じていた。ここに活躍された柔道師範に感謝してご尊名を挙げたい。
 中央では、富山県出身者に、正力松太郎十段始め、工藤一三九段、老松信一九段、?田勝善九段らが活躍した。富山県では、武専出身の、富山高校・富山大学師範の萩野啓之助八段、富山師範の香川弘八段、四高教授坂井吉雄八段、福井信俊八段、県警師範久保照夫九段、信越柔連会長明大卒入江松次九段、東京高師卒で中学校長の山岡保孝八段、金子周造八段、信越柔連会長・日大・国士舘大卒高嶋吉次郎九段、県警師範・全国警察大会優勝者簑浦登司広八段らの功績は高く、また大会ごとに演じられたいろいろな「形」の演武は素晴らしく美しかった。また、「古式の形」は格別であった。其の後2000年「とやま国体」において、北見敏明七段、蛯谷豊和七段が「古式の形」を見事に演じた。のち、この形を全日本形競技大会において演じ、優勝した。「五の形」では、末永明信六段、神田雅春六段が優勝した。
 前号で紹介のあった第二回欧州柔道形選手権大会の視察報告が醍醐敏郎、村田直樹氏によってなされているが、近い将来、世界形選手権大会が行われるであろうと推察される。 形の重要性については、全国大会が行われて節目の十回目となり、総合優勝も北信越地区が二年連続六回目と、今のところ連勝を続けてレベルの高さを誇っているが、いずれもわずかの差なので研修を続け大会ごとに「形」を披露して向上を続けなくてはいけない。講道館から講師を派遣しての「形」講習会は好評で、今後も続行して戴き、柔道試合と並行してその重要性を再認識してその評価法、採点方法の基準を定め、「形」を熟知した審査員による客観的な評価(上下の採点をカットして中三人による合計点で順位を決めるなど)による大会を希望したいものである。
 平成十三年に講道館と全日本柔道連盟の合同プロジェクトとして、「柔道ルネッサンス」を立ち上げ、四つの委員会に分かれて活動した。本県でも十四年から富山県柔道連盟会長がこの役を引き受け、委員長となって活動することにした。丁寧な挨拶の仕方、心配りについてもくだいて説明し、徹底を図った。試合においては、姿勢を正しく道場の真ん中で一本を取る柔道を奨励した。その後、毎年係を決めて、スピーチを川辺莞二七段、松井紳一郎七段、中村彰七段、四年目には四地区に分かれてそれぞれで啓蒙することにした。また、委員長も交代して中村彰総務部長とし、小・中・高に副部長・梶谷正道五段、北島一朗四段を置いて啓蒙を図っている。各県が実施されているように、(1)ポスターの掲示、(2)キャッチフレーズの公募(富山県は、小・中とも全国三位の応募数でした)、昨年高校生は五十通応募した。(3)副部長による大会でのスピーチの啓発活動。(4)ボランティア活動など、昨年八月二十日の全国小学生学年別体重別選手権大会では、一昨年入賞者の須藤(高岡工芸高校1年)が素晴らしいスピーチを行い、小学生を前に魅力あふれる言葉で行った。「柔道では試合のときの切れ味ある技で一本だけを求めるにではなく、礼儀も身につけて心を大きく持ってそしてマナーでも一本取ってほしいと思います。」と、大人が言うよりも先輩として具体的に説明したのがよかった。
 今後の予定では、今年十月には、関東・北信越ブロックの柔道フェスタを本県で行うことになっています。また、少子化の今日、本柔道連盟は、柔道の普及啓発活動等充実した諸事業を今後展開する予定です。最後に、読者諸兄のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。

(富山県柔道連盟・会長)

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