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今月のことば

2017年5月号

鹿児島県柔道会の変遷と主な活動

北 哲郎

 はじめに

 2020年の東京オリンピックの年に鹿児島県では、第75回国民体育大会が開催されることになり、会場は鹿児島市の鹿児島アリーナに決定しました。
 本県柔道会では、これまで一貫して「教育柔道」と「競技力向上」を最重点課題として取り組んで参りましたが、近年は「かごしま国体」の成功を目指して、取り組みを強化しています。
 この稿では、表題のことを検証して、今後の本県柔道をどのように発展させるかの課題を見つけたいと思います。

鹿児島県柔道会の変遷
 「武の国薩摩」「柔道王国鹿児島」の名を天下に轟かせた功績は、明治・大正時代の記録を辿ると明らかですが、ここでは組織的な面での変遷について記したいと思います。 ⑴ 大正13(1924)年に「鹿児島県柔道有段者会」が結成され、昭和初期には、宮崎・熊本との対県試合を開催するなどして本県柔道の普及振興に当たりました。 ⑵ 昭和21(1946)年12月1日、他県に先駆け、「鹿児島県柔道会」を設立、戦後の柔道復活に尽力。昭和23(1948)年12月1日には「柔道会館」が竣工。青少年の健全育成と講道館柔道普及の拠点となりました。 ⑶ 全国的な流れでは、昭和25(1950)年に学校柔道が復活。同年の第5回国民体育大会で、柔道競技が正式種目となりました。また、昭和27(1952)年からは全国高校大会(インターハイ)が始まりました。更に、昭和29(1954)年には、大正時代から続く歴史ある金鷲旗大会(当時は西日本高校柔道大会)が戦争の中断を経て再開されました。このように柔道の大会が増え、昭和30年代は地元鹿児島の選手が様々な大会で優勝を飾るなど目覚ましい活躍を見せ、県民を感動させたものです。 ⑷ 本県開催の全国規模の大会としては、昭和45(1970)年8月9日に第4回全日本選抜柔道選手権大会が鹿児島市の県体育館で開催されました。4階級32選手の激戦と見事な技の応酬は観客を魅了しました。   また、第27回国民体育大会は、昭和47(1972)年10月23日?25日、鶴の飛来地である出水市の、出水高校体育館で開催。鹿児島県が総合優勝を果し、大会運営も好評で関係者並びに県民に大きな感動を与えました。  第31回全国高等学校柔道大会は、昭和57(1982)年8月2日?4日、出水市体育館で開催。教育柔道の目的が達成されたとの高い評価を頂きました。 ⑸ 本柔道会では、嘉納治五郎師範の教えである「精力善用」「自他共栄」を座右の銘として、柔道の普及発展を図って参りましたが、昭和50(1975)年11月12日、鹿児島県柔道会を発展的に解消し、「財団法人鹿児島県柔道会」を設立。新しい寄付行為のもとに、13支部を設け、本県柔道の普及振興に努めることとなりました。 ⑹ 平成23(2011)年3月24日に「財団法人鹿児島県柔道会」から「公益財団法人鹿児島県柔道会」に移行し、同年4月から内部組織・体制を確立して、執行理事・理事が任務を分担し、業務を推進しています。

鹿児島県柔道会の主な活動内容
⑴ 「薩摩柔道ルネッサンス宣言」の唱和
 薩摩の郷中教育の歴史と実践内容については、平成18(2006)年の本誌8月号巻頭言に寄稿していますのでご参照ください。  郷土に伝わる郷中教育の原点、「負けるな」「うそを言うな」「弱いものをいじめるな」という教えと、嘉納治五郎師範の教えの原点に戻って活動する「柔道ルネッサンス」の主旨を活かした「選手宣誓の在り方」を常務理事に提案しました。そしてそれを元に「薩摩柔道ルネッサンス宣言」を考案して、平成18年11月3日の第34回県下少年大会で採用しました。宣言の内容が新鮮で具体的であり選手、保護者、観客にも大変好評でした。以後の大会でも少年たちが元気よく唱和しています。   「薩摩柔道ルネッサンス宣言」(一、は ひとつ)   私たちは 柔道をとおして  一、立派な人間になります     一、弱いものをいじめません   一、うそをつきません   一、礼儀を正しくします   一、自分に負けません  この宣言を唱和することによって、柔道修行によって、自分を磨き、弱い者を思い、人に優しくなり、柔道人として社会に認められ、尊敬されるということを実感するのではないかと考えます。  また、各種大会の開会式で「薩摩柔道ルネッサンス」「柔道MIND」のスピーチ(講話)を現場の指導者や参加選手にしてもらうことで、柔道を通じた人間づくりの目的が浸透しつつあるように思います。  また、「薩摩柔道ルネッサンス宣言」の垂れ幕を作成し、希望する学校・町道場等にも配布しています。
⑵ 「一本」を取る技の指導
 以前、講道館の『柔道』誌に「北京オリンピック(テレビ)観戦記」を寄稿したことがありますが、それは、世界の柔道が競技会で勝つことのみに価値が求められているように感じられてならない。嘉納治五郎師範が求めた柔道は、理にかなった技で「一本」を取ることであり、勝っても驕らず負けても挫けず、常に相手を尊重し、敬意を表す礼法をしっかり身につけることにある。我々柔道指導者は、嘉納師範の「人間教育」を目的とした柔道の原点に立ち返り、柔道の普及振興に寄与する責任と使命があると記してあります。 ⑶ 本県柔道会で推進している主な事業 ① 柔道指導者講習会(県総合体育センターと共催) ② 強化練習会(中高一貫、高校・大学・一般合同) ③ 柔道会だよりの発行(平成6年から発行。現在36号) ④ ホームページによる情報公開 ⑤ 鹿児島県選手権・女子選手権大会の開催 ⑥ 県民体育大会の開催 ⑦ 高校・中学校・少年大会の開催 ⑧ 昇段審査(本部・地区)の実施 ⑨ 柔道に関する調査研究

むすび
 「燃ゆる感動 かごしま国体」の成功に向けて柔道会一丸となって取り組んで参りますが、成功の鍵は、嘉納治五郎師範が示された「精力善用」「自他共栄」の教えが、大会の内外で発揮されることにあると思います。  3年後の国体で全国の選手の皆さんが、熱戦を展開し、鹿児島県民に感動と柔道の素晴らしさを伝えてくださることを願っています。  鹿児島県柔道会では、関係者皆様の来鹿を心からお待ちしています。
(公益財団法人鹿児島県柔道会 会長)

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