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今月のことば

2004年11月

アテネ五輪選手の活躍を称え
 柔道普及発展の好機に

蓮見  弘

 今年の夏は、日本国民の多くは、暑さと眠気との闘いであったと思います。なぜなら、人の体温を超える記録的な猛暑が続き、寝苦しい夜に加え、アテネ五輪のテレビ中継が睡眠不足を増幅したからです。日本の場合、時差の関係で競技が夜半から深夜に集中していたが、柔道をはじめとする連夜の日本選手の活躍に引き込まれて、テレビで観戦し応援していた人が意外に多かったのです。

 アテネ五輪競技の先陣を切って行われた柔道競技は、8月14日から7日間にわたり世界103カ国・地域から、384人が参加して行われ、日本からは、男・女各7階級14人の選手が出場した。
 日本柔道は、男・女計14階級のうち、金8個、銀2個のメダルを獲得し、史上最高の成績を収めた。7階級のうち、5階級を制した女子の驚異的な躍進。シドニーと同じ3階級を死守した男子の健闘。連日のように、メインポールの中央に国旗が掲げられ、国歌が流れた。この状況は連日テレビで放送され、柔道に関心がある者ばかりでなく、柔道を知らない者まで、日本柔道の技の冴えを目の当たりにし、「一本」取る柔道の醍醐味に魅了された。日本選手の連日の活躍は国民に大きな感動を与え、街の話題となった。

○日本選手の技の冴えが美しく、立技での一本勝が目立ち気持ちが良かった。
○女子選手の目覚ましい活躍は素晴らしかった。
○日本選手はとても明るく輝いていた。悲愴感は見られなかった。
○メダリスト達はインタビューで、育ててくれた師との出会い、仲間の励ましなどを爽やかな言葉や態度で表現していた。

また、個々の選手の活躍も見事だった。
○野村忠宏選手の史上初の三連覇。足の故障を感じさせない強さで、二連覇を果した谷亮子選手の偉業。
○見事なオール一本勝で栄光をつかんだ内柴正人選手の活躍。
○最後まで諦めず、残り1秒で奇跡の逆転勝ちした、横澤由貴選手の勝負への執念。
○攻めの柔道で快勝し、古賀コーチに抱きつき喜んだ谷本歩実選手の姿。
○決勝戦、袖釣込腰で投げ切り、優勝した上野雅恵選手の見事な技。
○準決勝を延長戦で制し、決勝戦では鮮やかな一本勝。8年かかって金メダルを手にした阿武教子選手の喜び。
○多彩な技で攻め抜いた泉浩選手の健闘。
○準決勝まで一本勝。決勝戦では抑え込まれて大ピンチ、寝技を解いて逆に抑え込み、逆転勝ちした塚田真希選手。
○足技、内股で大きな相手を倒して勝ち進み、得意の小外刈で決勝戦を制し、五輪最重量級で16年ぶりに優勝した鈴木桂治選手の快挙等話題は尽きない。

日本選手の素晴らしい成果は監督、コーチをはじめ指導者と選手自身のアテネ五輪にかける強い意志と、厳しい稽古の結果であり、長期にわたり、幾多の壁や困難を乗り越えて、講道館柔道の神髄と誇りを世界に示すことができたのだと思う。7月23日に行われた「日本代表柔道選手団の壮行会」の席上で、上村春樹団長が、決意表明の言葉の中で、「今度のオリンピックは組み手と技で勝負する」と述べていたが、まさにそれが実証された。

 日本選手の活躍に対し、日本政府をはじめ関係自治体、所属団体等は種々の型で賞揚している。全日本柔道連盟においても、10月24日「第59回国民体育大会柔道競技開始式」において、嘉納行光会長からメダリスト達に対する特別表彰が行われた。

 また、10月2日の「日本武道館開館40周年記念式典」において、日本武道協議会(武道9団体と武道館で組織。会長・塩川正十郎氏)から「アテネオリンピック躍進日本柔道」と称えられ、全日本柔道連盟に感謝状が贈られた。

 アテネ五輪での日本選手の目覚ましい活躍は、柔道の普及発展にも大きく貢献した。アテネ五輪後、本県柔道連盟事務局には、連日柔道修行についての照会が寄せられている。おそらく、アテネ五輪での日本選手の活躍ぶりをテレビで観戦していた子供達や保護者が、日本選手の「一本」取る柔道、技の冴えに魅せられ、柔道に対する関心を深めたのであろう。県内の個人道場、柔道クラブへの入門(会)者も増加している。

 柔道指導者はアテネ五輪での日本選手の活躍をいつまでも忘れず語り継ぎ、これを柔道普及発展の好機ととらえ、講道館柔道の更なる発展のために最善の努力をしたいものである。

(埼玉県柔道連盟会長)

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