今月のことば
2020年9月
愛媛県柔道協会会長就任にあたり
―我が柔道人生を振り返って―
―我が柔道人生を振り返って―
大西 誠
はじめに
図らずも、令和2年6月末に開催された一般財団法人愛媛県柔道協会第2回理事会において、会長の要職に就任しました。
平成6年にサラリーマンを退職し帰郷してから、地元柔道会では少年柔道の指導育成のお手伝いはしていましたが、本県柔道協会とは全く無縁の生活でした。愛媛国体を3年後に控えた平成26年に、前年春の統一地方選挙で愛媛県議会議員に初当選し、愛媛国体の準備や行政との調整役として本県柔道協会のために汗をかけ!との諸先輩方からの力強い応援を頂き、本県柔道協会理事に就任と同時に副会長を仰せつかりました。当時の正副会長および理事長人事では、自ら副会長に立候補し、併せて全国初の女性理事長となる山口奈美理事を強引に推薦し、本人をアッと驚かせたことを懐かしく思い出します。
本年春を以って会長職を退任された河野賢嗣前会長、女性理事長として東奔西走してくれた山口奈美理事をはじめ、全ての本県柔道関係者のご尽力と全国の柔道関係者のご協力により「愛顔つなぐえひめ国体」が成功裏に終了出来ましたことを改めてお礼申し上げます。
愛媛国体の成功と3期6年の副会長職の全うを以って、本県柔道協会理事を辞する意向でしたが、縁あって理事の再任と会長職拝命と云う神様のいたずらの様な展開となりました。
元より力不足は重々承知しておりますが、新理事はじめ全ての柔道関係者のお力をお借りし、微力ではありますが青少年の健全育成と柔道の普及啓発に努めて参ります。諸先輩方・同志の皆様方にはご指導ご助言を賜りますよう、この場をお借りしてお願い申し上げます。
柔道との出会い
柔道をしたい!そう思ったのは昭和47年頃だったと記憶しています。テレビで観た梶原一騎氏原作の「柔道一直線」で、桜木健一氏演じる柔道少年と高松英郎氏演じる柔道の師匠が神社の石段を回りながら落ちる地獄車、近藤正臣氏演じるカッコ良い柔道少年が足の指でピアノを弾くシーンに心躍らせ、両親に柔道を習わせてほしいと懇願しました。当時私の住む愛媛県伊予市では、数年前から伊予警察署道場をお借りして伊予柔道会が少年柔道教室を開催していましたが、原則として小学校3年からとなっており、1年だった私は入会出来ませんでした。当時身体の大きかった私は、学年が上の先輩を誘い約半年後の昭和48年4月に2年から柔道を始めました。地元柔道会の怖いお兄ちゃん(指導者)だった坂本美喜男先生、警察署の大きい優しいオジサン(コーチ)だった渡邉章先生とは、50年近く経った現在もご指導ご助言を頂いております。
長きに亘る現役生活
小学校・中学校・高校2年まで万年愛媛県ベスト4だった私は、高校3年の県高校総体重量級で初めて優勝することが出来ました。私の出身高校は、四国有数の進学校で、原則高校2年の新人戦で部活動は終了し、受験勉強に専念するのが当たり前の学校でした。私は顧問の山一巌先生、私の人生に大きな影響を与えてくださった松下文治先生、両親と相談し、校長に直談判を行い、念願だった県高校総体出場が叶いました。また出場しただけでなく、優勝出来たので、喜びも一入でした。全国高校総体では1勝も挙げることは出来ませんでしたが、私の人生の大きなターニングポイントとなった出来事でした。高校3年の県総体で優勝していなかったら、間違いなく高校卒業で私の柔道生活は終了していたと思います。人生は何かのきっかけがその後の人生の全てを左右することが有ると、当時の時の流れを懐かしく思い出します。
その後、縁あって柔道の名門筑波大学柔道部の門を叩くことになりますが、これまで厳しい先輩もおらず練習も自分のやりたい日にやりたい時間だけ行っていた私にとっては、大変厳しい大学柔道生活となりました。筑波大学では、川村禎三先生、竹内善徳先生、中村良三先生、小俣幸嗣先生、松井勲先生、木村昌彦先生はじめ多くの先生・先輩方にご指導を頂きました。その甲斐あって大学4年の時には、78kg級の個人戦代表となり、また全国国立大学柔道大会の団体戦メンバーとして全国優勝するなど、弱いなりにも充実した大学柔道生活を送ることが出来ました。
大学卒業後は株式会社東芝に就職し、ここでは実業団柔道部にて6年間各種大会に出場いたしました。試合で年に何回か全国各地を回ることが出来て非常に充実した楽しい柔道生活とサラリーマン生活を送ったのがこの時期でした。
6年間の東芝での社会人生活を終えて、平成6年春に地元愛媛へと帰郷し、今日を迎えます。
柔道の現状について
少子化の進行と一部人気スポーツへの集中もあり、柔道のみならず多くの青少年スポーツの競技者人口並びに各協会への登録者数の減少が急速に進行しています。柔道の状況も同じ傾向で、愛媛県においては、この3、4年で登録者数は3割近い減少となり、今後の協会運営に早くから危機感を抱き、経費削減と各種大会への参加費、登録費の値上げ等を実施してきました。各地域の柔道団体も柔道人口の減少を受けて、存続に向けた普及啓発活動を続けています。
「柔能く剛を制す」「礼に始まり礼に終わる」「健全な精神は健全な肉体に宿る」などは、柔道を表現する代表的な言葉です。青少年の健やかな成長の過程で、身体的な成長(体力の向上)と精神的な成長(人間力の向上)のバランスが必要なことは論を待ちません。我々柔道経験者は、適切な指導者の下で行えば、青少年の健全育成に大きく寄与する優れたスポーツの1つであると経験知として理解しています。しかし日本国内において、柔道は「お家芸」としてオリンピックをはじめ多くの世界大会でメダルを獲得する(日本スポーツ界での使命ともなってますが)競技であり、子どもが自ら習いたい・自身の子どもを習わせたいスポーツの位置付けではありません。当然ながら特効薬は無く地道な活動ですが、全国の柔道関係者が従来の紙媒体に加えSNSを利用した広報活動・体験教室・ボランティア活動等の地域貢献活動を積極的に行い、柔道の素晴らしさを広め、柔道人口の裾野拡大を図って行くことが一層大事となっています。
本県柔道協会の取り組み
本県柔道協会は6年前に一般財団法人への組織変更を選択し、運営方法も大きく様変わりしました。当然のことながら会計士にも理事会に入って頂き、短期的な金銭の流れに加え中長期的な財政の見通し計画も立てて頂いています。ここで先程述べた柔道人口の減少(会費収入の減少)が今後の協会運営の問題として取り上げられ、経済的課題の洗い出しと改善策を検討しています。
昨年から地域柔道団体の紹介パンフレットを市町教育委員会を通じて各学校に配布して貰えるよう議論しましたが、他のスポーツ団体との兼ね合いもあり叶いませんでした。そこで個人的なルートで学校長に直接お願い出来る地域は、校長の理解を得て配布する取り組みを行い、柔道の普及啓発と柔道人口増加を目指しています。
3年前にハワイ州柔道連盟から愛媛県庁に1本のメールが来たことをきっかけに、柔道を通じた海外との青少年交流を私自身の課題とし、昨年は大学生とロシア(オレンブルグ)へ、小学生とハワイ州(ホノルル等)へ遠征を実現することが出来ました。愛媛の子どもたちが異文化に触れて見聞を広め、改めて日本の良さを理解して貰うためにも、課題は沢山ありますが継続して海外との交流に取り組みたいと思います。
柔道協会の組織変更に伴い、県下所属団体の現場の声が協会に届きづらくなったとの声を一部お聞きすることがあります。正副会長、正副理事長、事務局員でSNSグループを作成し(執行部会と命名)、情報共有化の推進とホームページ等へ発信する内容確認を頻繁に行う体制が出来上がりました。併せてコロナ禍で殆どの会議が出来ないことをきっかけに、前述の執行部会に加え理事会、各専門部会もオンライン会議が出来る体制を準備中です。
「伝統を守りつつ新しい伝統を作る」全ての本県柔道関係者と全国の諸先輩方のお知恵をお借りして、前を向いて歩んで参ります。
皆様方のご指導ご助言ご鞭撻を宜しくお願い致します。
(愛媛県柔道協会会長)
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