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講道館国際セミナー及び青年海外協力隊柔道技術補完研修

 平成25年2月20日から3月15日の24日間にわたり、講道館国際セミナー及び青年海外協力隊補完研修が開催された。
 
 本セミナーは、各国において将来指導的立場に立つ若手指導者に対して、正しい講道館柔道の理論と技術に関する教育を行い、指導者として必要な教養を具え、柔道指導の基礎が確立した資質の高い指導者を養成、また、これにより各国における正しい講道館柔道の指導を充実させ、世界における講道館柔道の健全な発展を図る目的で実施されている。
 
 また、同時に開催している青年海外協力隊補完研修は柔道隊員が任国で指導を行う際、相手国からの要請に的確に応えることができるよう、柔道の技能・知識等の向上の為に実施されている。

 今回の受講生、カリキュラムは以下の通りである。

受講生

【国際セミナー参加者(各国柔道連盟推薦指導者)9名】
    Mr. Mamy Dongoza RASOLONDRAIBE (マダガスカル)
    Mr. Nambinina Arsene RANDRIANITOVINA (マダガスカル)
    Mr. YOSEF A.MOHAMED ELBOUZIDI (リビア)
    Mr. Ahmed ALMESHAAL (リビア)
    Mr. Damdinsuren BATSAIKHAN (モンゴル)
    Mr. Molomjamts DASHDELGER (モンゴル)
    Mr. Michel Desire Laval PERRINE (モーリシャス)
    Ms. Elena IRINA SAMOILA (ルーマニア)
    Mr. Marat DANAIBAYEV (カザフスタン)
【青年海外協力隊研修生7名】
    鈴木 祥子(国士舘大学卒 ラオスへ派遣予定 地方都市サバナケットにて、選手の強化・育成及び柔道人口の拡大、及びナショナルチーム指導のサポート)
    長谷川 靖(日本大学卒 ペルーへ派遣予定 地方都市アレキバにて、市内12クラブの巡回指導、及び市内学校にて初心者を指導)
    秋山 日向子(広島大学卒 ヨルダンへ派遣予定 首都アンマンにて、女子ナショナルチームの指導、及び女子柔道普及のための活動)
    山崎 将太(鹿屋体育大学卒 ブルキナファソへ派遣予定 首都ワカドゥグにて、小・中・高校における柔道振興・普及、及び市内9道場の巡回指導)
    中村 俊文(金沢学院大学卒 インドネシアへ派遣予定 首都ジャカルタにて、ラグナンクラブを中心に、他14クラブへの巡回指導)
    井坪 圭佑(東海大学卒 ボツワナへ派遣予定 首都ハボロネにて、多くの地域で柔道を広めるため、指導者の指導・育成、及び学校体育の一環として複数校を巡回指導)
    勅使瓦 慧(仙台大学卒 インドへ派遣予定 地方都市ラクノウにて、市内3道場の巡回指導、また、バラナシ、サハランプ―ルの2都市において2週間から1ヶ月の集中指導を行う)
    アシスタント1名
    仲元 歩美(青年海外協力隊OG ザンビアで2年間活動し2013年1月に帰国)


 今回の国際セミナーへは、6カ国より、異なる文化、宗教、言語を持った9名が、「柔道」によって繋がり、柔道発祥の地であるここ日本、講道館に集うこととなった。

 また、同時期に開催された青年海外協力隊の技術補完研修へは、世界に日本の文化である柔道を広めようと志し、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊へ応募し、一次選考、二次選考を通過した候補生7名が参加し、計16名により、セミナー、研修が行われた。

(青年海外協力隊のHPはこちら→ http://www.jica.go.jp/volunteer/application/seinen/ 募集要項、応募から合格までの流れ等、詳細が確認出来ます。)

カリキュラム

  • 講義
    柔道史概論、世界柔道の現状と課題、指導計画の立案、トレーニング理論等
  • 実技
    基本動作、投技、固技の基本から応用、連絡技等々、形(投の形、固の形、講道館護身術)、指導法(少年指導、初心者指導、安全指導等)、審判法、トレーニング法 等
  • 視察等
    東京都柔道選手権大会、講道館月次試合、都内視察(永昌寺等)等
研修では、ただ単に柔道の知識、技術を習得するのではなく、柔道本来の教育的側面について理解させ、柔道の指導者としてどうあるべきかについて考えさせることも目的とした。

研修は毎朝10時から夜の7時半まで行われ、受講生は1日の大半を柔道衣に身を包み畳の上での研修を受け、また、時には柔道衣をスーツに替え柔道の歴史、理論、規定等を学んだ。

柔道史概論
村田直樹講師による「柔道史概論」
安全指導
鮫島元成講師による「安全指導」
投技の連絡変化
向井幹博講師による「投技の連絡変化」
講道館護身術
藤田真郎講師による「講道館護身術」

審判規定解説 審判実習
平野弘幸講師による「審判規定解説」と「審判実習」
関節技
柏崎克彦特別講師による「関節技」
トレーニング理論と実習
射手矢岬特別講師による「トレーニング理論と実習」
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研修の様子
固技の応用
松村茂也特別講師による「固技の応用」

永昌寺にて
日本語教育活動題材
日本語教育活動題材
 フェリス女学院大学との共同事業「*講道館日本語教育ボランティア」の一環で、柔道発祥の地、永昌寺を訪れた。(*研修終盤、外国の指導者たちに畳の上だけでなく日本の文化を紹介し、実際に触れてもらおうと都内各所を巡りながら、フェリス女学院大学の学生にボランティアで日本語教育活動を行ってもらい、双方向での文化交流活動を行っている。)




形の演技、研修の成果発表の様子
 研修最終日には、各々が本研修で学んだ形を演技、発表した。演技を終え、晴れて修了証を手にした受講生たちは、24日間の研修をやり遂げた充実感と達成感からか、一様に目には涙を浮かべていた。あるいは、共に学び過ごした仲間たちとの別れへの寂しさもあったのであろう。ここで築いた絆を今後も大切にしていってもらいたい。

講道館国際セミナー及び青年海外協力隊柔道技術補完研修
最後に、セミナー、研修終了後の各人からの報告書の一部を紹介したい。

  • 「小学生の時から柔道をやってきたが、知らないことが多過ぎたと気付かされた。この研修がなく、このまま海外に派遣されていたと思うと怖い気持ちになった。」

  • 「基本の大切さがわかったと同時に、基本を教える際にも指導者は工夫をする必要があるとわかった。」

  • 「外国のコーチと一緒に研修を受ける中で、どうやって彼らと接したらいいのか、柔道についてどのように考えているのか、実際にどのように指導しているのか、事前に知ることが出来たことは大きな収穫でした。」

  • 「今まで競技者として柔道と接して来て、なぜこのような動きをするのか、何のための練習かあまり考えていなかった。しかし、この研修では其々の意味について学び、理解することが出来た。」

  • 「柔道の歴史を改めて知ることで、嘉納師範が本当に伝えたかった柔道を知り、現地でその柔道精神を伝えることも私の任務であると感じました。」

  • 「今まではカタチだけの形を行っていたが、今回、一つ一つの技の理合を学ぶことが出来た。形には柔道の基本動作が詰まっており、稽古することにより自然と基本動作を身につけることが出来た。」

  • 「指導対象の違いによる指導法、海外での指導の心得等、たくさんのことを学んだ。指導者はあくまでも主体となる生徒を引き立てることが重要であると感じた。」
 などの感想が寄せられた。参加者は今まで自分達が学んできた柔道を改めて見つめ直し、再認識するとともに、より多くの知識、技術、そして柔道の精神、心得を学ぶことが出来たようである。
 
 海外からの受講生は新たな知識と技術と柔道精神、講道館での思い出を胸に帰国の途についた。それぞれの母国での今後の活躍が期待される。
 
 また、青年海外協力隊研修生はこの後、70日間に亘る派遣前訓練(語学訓練等)を経た後、それぞれの任国に協力隊柔道隊員として派遣される。
 
 これから二年間の任国での柔道指導、活動では、柔道の精神である「精力善用」「自他共栄」を持って、あるいは任国での活動を通して、この言葉に込められた精神をより深く理解、体感し、現地の人々と良好な人間関係を築き、国際交流を図り、任国と日本との架け橋になることを期待する。


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