HOME > 柔道と礼 > 柔道と礼、その作法

柔道と礼、その作法

柔道と礼、その作法

柔道での礼の精神と作法は、道場において柔道(精力善用と自他共栄)を学ぶにあたって、その根幹の1つとなるものです。同時に、社会生活上でも欠くことのできないものです。

昭和42(1967)年制定の『柔道試合における礼法』趣旨では、

礼は、人と交わるにあたり、まずその人格を尊重し、これに敬意を表することに発し、人と人との交際をととのえ、社会秩序を保つ道であり、礼法は、この精神をあらわす作法である。
精力善用・自他共栄を学ぶ柔道人は、内に礼の精神を深め、外に礼法を正しく守ることが肝要である。

とし、講道館では、礼の精神を尊重する意義と、その精神の表現である礼法の重視を強調してきました。

柔道の練習や試合は、互いに組み合って身体を作用させて技を掛け合う仕組みになっているので、礼の精神を失ってこれを行えば、暴力に対する暴力の争い、たんなる格闘となり、これを学ぶ意義はまったく失われてしまいます。
練習や試合の場では勝敗にとらわれて、興奮のあまりともすれば粗暴な動作に陥りやすいものです。しかしそのような時にこそ、心を平静にして、礼の精神ととるべき態度をかえりみ、自らを律することで、心身ともに鍛えられ、修行上の効果も大きいといえるでしょう。

礼の精神が、表に現されたものが、礼の作法つまり礼法です。
道場内で特に指導されているのは、座礼と立礼です。道場ではこの2つの礼法の指導を中心としていますが、これが全てではありません。
礼法は、礼の精神の表現方法なのですから、いかなる場合、いかなる時、いかなる方法をとっても礼を欠かないように考える必要があります。人に接し、具体的に物事を判断し行動する時に、いかにするのが最も柔道の精神、礼の精神に即したものになるのか、を考えるということです。この考える、ということは、単に礼法を形だけ守る以上に大きな意義があるといえます。

礼の1回1回に、その礼の精神をかえりみ、誠意を込めた正しく丁寧な礼を心がけましょう。

柔道の練習における最初の礼は、互いに相手になりあって、人間を練り合う練習・修行を始めましょうというあいさつであり、終わりの礼は練習の相手になってもらってありがとうございました、という感謝の表現です。
道場での礼は、一般生活における自他共栄を実践するための練習である、ともいえるでしょう。

参考:『日本の武道柔道』老松信一